10.小田原 湯本(『双筆五十三次』:初代広重、三代豊国)
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人物解説
本図には湯上りと思われる女性と、籠に手を入れてにこやかな顔で何か話しかけている少女が描かれている。籠の中にはコマなどの玩具がたくさん入っている様に見える。籠の外に置いてあるのは、小さな寄木細工の引き出し。籠におさめられた玩具や、そばに置いてある寄木細工はこの地方の名産品である。コマなどの木地玩具は慶長年間より箱根湯本などで生産されたとされ、現代へとその伝統は続いている。また小田原宿を出て、東海道を西に進むと、寄木細工の里として知られる畑宿という間の宿がある。寄木細工は幕末頃からこの地方を中心として盛んになり、隣の小田原や箱根宿などでも名産品となった。
風景解説
大磯から歩みを進めると、酒匂川に辿りつく。本図に描かれるのは酒匂川と箱根の山々の光景・防衛上の理由で幕府が架橋や渡し舟を許さなかったため、旅人たちは徒歩渡しにより川を渡った。手前の岸には人足や旅人たちの姿が描かれ、酒匂川には川を渡る人々が見える。広重は肩車や平輦台、大高欄輦台など、渡し賃によって様々に異なる徒歩渡しの種類を細かく描き分けている。対岸画面右端には小田原城が見得、遠景には雲海の中に箱根連山がそびえ立っている。
〈参考書籍〉
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