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【テーマ設定】
インタビュー計画概要:
映画・歌舞伎・ジャズといった「アナログな古典芸能」の素養を持つ広井王子氏が、なぜ玩具・アニメ・ゲームという「デジタル/サブカルチャー」の黎明期において革新的なヒット作を生み出せたのか。 本人が語る「自分にはやりたいことがなく、誰かに示された道を歩んだだけ」という"受動的な動機"と、そこから生まれた"能動的かつ巨大なムーブメント"(メディアミックス、2.5次元舞台の先駆け等)のパラドックスを解き明かす。また、個人の作家性よりも「場(コミュニティ)」や「体験」を重視する広井氏独自のエンターテインメント論を体系化する。
大テーマ:玩具・アニメ・ゲーム・舞台をつなぐ「体験」の演出と、他者に導かれたクリエイティブの軌跡
中テーマと主な焦点:
1. 原風景としての「昭和の興行」と「受動的肯定感」
幼少期に浴びるように触れた映画・歌舞伎・レビューショウなどの「アナログ体験」が、後のゲームや舞台演出にどう刻印されているか。また、「神様はお前みたいなポンコツを愛される」という言葉による自己肯定感の獲得と、それが「流れに身を任せる」仕事の流儀にどう繋がっているかを伺う。さらに、 映像・音楽(ジャズ)への傾倒から、24歳での起業(レッドカンパニー)、そして予期せぬ「オマケ(玩具)」企画への転身プロセスについても聞く。
2. 制約から生まれたイノベーション(オマケからアニメ・ゲームへ)
『ネクロスの要塞』での権利関係のトラブルが、オリジナル原作創出への意識をどう変えたか。『魔神英雄伝ワタル』における「玩具(商品)の論理」と「アニメの物語」の融合手法(RPG的階層構造の発明)についても確認する。さらに、『天外魔境』におけるCD-ROM(大容量メディア)との遭遇と、「和風ファンタジー」への挑戦についても伺う。
3. 「デジタルとアナログの融合」としての『サクラ大戦』
ゲームキャラクター(虚構)と声優による舞台(現実/身体性)をリンクさせる構想は、どの時点から設計されていたのか。「歌謡ショウ」の演出に持ち込まれた歌舞伎やレビューの要素と、それがファンコミュニティに与えた熱狂の正体について聞く。さらに、レッド・エンタテインメント退社と「著作権の手放し」に至る葛藤と決断についても伺う。
4. 「示された道」を歩むクリエイターの現在地
台湾(ジミー・ライ氏)での活動、スマホゲームでの挫折、少女歌劇団(吉本興業)の立ち上げなど、2007年以降の活動に見る「求められることに応える」姿勢や、70歳を迎えて回帰した「歌舞伎(市川團十郎)」や「ジャズ」への想いを聞く。さらに、マルチな才能を発揮しながらも「悩んだことがない」と言い切る、広井流・企画発想術(情報の吸収と出力のメカニズム)について伺う。
期待される成果:
食玩ブームからアニメ化、そしてゲームと舞台の融合(2.5次元の祖)へと至る日本のコンテンツビジネスの進化を、その中心にいた当事者の視点から連続した歴史として記述する。また、「音楽・映像・キャラ・物語」の組み立て順序や、異分野の才能(田中公平氏、藤島康介氏など)を巻き込むプロデュース力、そして「他者のリクエストを面白がる」という独自の創作哲学を明らかにする。さらに、デジタル全盛の現代において、広井氏が一貫してこだわり続けた「アナログな身体性(舞台、ジャズ、祭り)」の重要性を再評価し、次世代のコンテンツ制作への示唆を得る。
【参考文献】
アミューズメント産業出版編. 『アミューズメント産業』 27, no. 8 (1998年7月).
尾崎正直. 「株式会社ハドソン:一本のゲームソフトは一本の映画に匹敵する」. 『広告』 34, no. 3 (1993年5月).
『企業と広告』 22, no. 12 (1996年12月).
『国会ニュース』 52, no. 3 (1992年3月).
小林信重. 「フリーライター時代の堀井雄二の創作活動を支えた社会的文脈」. 『日本デジタルゲーム学会 夏季研究発表大会 予稿集 2023 夏季研究発表大会』 (2023年): 90-94.
.https://www.jstage.jst.go.jp/article/digrajprocsummer/2023/0/2023_90/_pdf/-char/ja 須川亜紀子. 『2.5 次元文化論 舞台・キャラクター・ファンダム』. 青弓社, 2021.
日本民間放送連盟編. 『月刊民放』 27, no. 5 (1997年5月).
吉岡史郎. 「『脱・テニミュ史観』 を目指して―『サクラ大戦』 に見る 2.5 次元ミュージカルの 新たな可能性―」. 『アジア文化研究』, no. 44 (2018年): 149-166.
広井王子
