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【テーマ設定】
インタビュー計画概要:電子出版の軌跡:ボイジャーの挑戦――映像メディアと「本」の間で
大テーマ:
ボイジャー社の創業者・萩野正昭氏のキャリアを軸に、日本の電子出版黎明期において、映像・マルチメディア制作という出発点が、いかにして「本」の概念を拡張する独自の開発思想(本2.0)を形成したかを探る。特に、紙の書籍の電子化という発想ではなく、インタラクティブ性を重視した視聴覚メディアの系譜が、その後の電子書籍・出版ツールの開発に与えた影響を一つの事例として分析する。
中テーマと主な焦点:
1.創業期〜マルチメディア時代
創業以前の教育映画制作から、レーザーディスク、HyperCard、マルチメディアCD-ROM開発に至る中 で、いかにして「送り手と受け手の壁を取り払う」という作家性・開発思想の原型が確立されていったかを探る。また、ボブ・スタイン氏や浜野保樹氏との出会いが思想形成に与えた影響を分析する。
2.電子書籍・プラットフォーム時代
T-Time、ドットブックといった電子書籍ツールから、近年のウェブプラットフォーム「BinB」「Romancer」に至るまで、制作環境の変化の中で、一貫した開発思想がどのように深化し、適用されていったかを分析する。特に、「本が嫌い」と公言する萩野氏が、なぜ「本らしい」ビューワーを志向したのか、また従来の出版産業とどう向き合ってきたのかを明らかにする。
【期待される成果】
萩野正昭氏の証言から、日本の電子出版産業の歴史における、映像・マルチメディアを源流とする開発思想の今日的意義を考察する。さらに、商業的な出版システムの外側で、いかにして独自の作家性やツール開発思想が生まれ、育まれてきたのかを具体的に解き明かし、ボイジャーという企業の歩みを、世界のデジタル出版史における重要なケーススタディとして位置づけることを目指す。
【参考文献】
浜野保樹. 「映像の新たなるセンティニアルヘ」. 『映像学』 57, 1996: 80-95.
萩野正昭. 「1-3-3 ソフトウェア制作」. 『テレビジョン学会誌』 47, no. 11, 1993: 1449-51.
萩野正昭. 「みんなの電子出版であるために」. 『印刷雑誌』 93, no. 9, 2010: 9-11.
萩野正昭. 「On Screen に図書館は生きていく」. 『図書館界』 62, no. 6, 2011年3月: 423-29.
Kendrick, James. "What Is the Criterion? The Criterion Collection as an Archive of Film as Culture." Journal of Film and Video 53, no. 2/3, Summer/Fall 2001: 124-39.
村上泰子. 「〈書評〉池澤夏樹編『本は、これから』」. 『関西大学インターディパートメント論集』, no. 4, 2011年3月: 73-78.
常世田良. 「資料のデジタル化と法制度・対策・展望」. 『図書館界』 62, no. 6, 2011年3月: 430-31.
萩野正昭