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【テーマ設定】
インタビュー計画概要:
携帯電話向けウェブサイト「魔法のiらんど」の開発者である谷井玲氏へのインタビューを通して、同サービスがいかにして「ケータイ小説」という文化現象を生み出すプラットフォームへと成長したのか、その背景と経緯を開発者の視点から明らかにすることを目的とする。
大テーマ:「魔法のiらんど」はいかにしてケータイ小説を生み出すプラットフォームに成長したのか
中テーマと主な焦点:
1.サービス開始までの経緯
1999年のiモード開始という時代背景の中、システム開発会社であったTOS社が「魔法のiらんど」を立ち上げたきっかけについて聞く。NTTドコモとの関係性や、当時の競合サービスの状況など、サービス開始前後の業界環境についても尋ねる。
2.初期のサービス設計とビジネスモデル
ホームページ作成を主軸としたサービス開始当初の具体的な内容、コンパクトHTML(CHTML)技術の活用、そして着メロや小説投稿機能(BOOK機能)といった関連事業がどのように展開されたかを探る。当初想定していたビジネスモデルと実際の収益構造の違いにも焦点を当てる。
3.ユーザーとの関係性とマーケティング
10代の女性ユーザーが中心となったコミュニティがどのように形成されたのか、その実態に迫る。意図的なマーケティング戦略があったのか、それともユーザー主導の口コミによって自然発生的に成長したのかを問う。特に、地方在住の若者など、特定のユーザー層に支持された理由を探る。
4.ケータイ小説プラットフォームへの進化
単なるホームページ作成サービスから、ケータイ小説を代表するサイトへと変貌を遂げた背景を明らかにする。小説投稿機能がいつ、どのような経緯で追加され、なぜ爆発的な人気を博すに至ったのか、その要因を開発者の視点から聞く。
5.事業拡大期の運営と経営
2006年のドワンゴとの資本提携や、ケータイ小説ブームが最盛期を迎えた2008年から2010年頃にかけて、急増するユーザーとPVに技術的・運営的にどう対応したのかを尋ねる。事業の拡大に伴うプラットフォーム開発や経営面での変化についても聞く。
期待される成果:
本インタビューを通じて、一つの技術サービスが、ユーザーの創造性と結びつくことで「ケータイ小説」という新たな文化を生み出すに至ったプロセスを、開発者自身の言葉で記録することが期待される。意図的なマーケティングではなく、ユーザーの自発的な活動がいかにして巨大なムーブメントを形成したのか、その背景にある技術的制約(コンパクトHTML)や独自のユーザー文化(口コミ、深夜ラジオ的なコミュニティ)を明らかにすることで、日本のインターネット文化史における貴重な証言を得ることを目指す。
【参考文献】
鎌田真樹子. 「ケータイ小説について―大人と子どものギャップ―」. 『図書館雑誌』 103, no. 8 (2009): 522-23.
高橋樹里. 「アンケートReport報告 What!iらんど利用方法」. メディアポータル部カスタマーサポートグループ, 2010.
武内佳代, 川原塚瑞穂. 「ケータイ小説における女同士の関係―『恋空』ブームとは何だったのか?―」. 『お茶の水女子大学人文科学研究』 7 (2009): 25-40.
速水健朗. 『ケータイ小説的。』. 原書房, 2008.
明星聖子. 「デジタルアーカイブのための新しい「文献学」―未来の「文学全集」、そしてその先にあるものを考えて―」. 『情報処理学会研究報告』 2006-CH-70, no. 4 (2006): 25-32.
NTTドコモ10年史編纂事務局 (編). 『NTTドコモ10年史モバイル・フロンティアへの挑戦』. NTTドコモ, 2002.
吉田由紀, 田邊勝義, and 奥雅博. 「第3回 NTTコア技術シンポジウム「ポータル技術シンポジウム」開催報告」. 『NTT技術ジャーナル』 18, no. 5 (2006): 48-51.
谷井玲