C1ー2 いろいろな流派

浮世絵には描き方の流れというものがある。それぞれの絵師が自分の技を磨き、その流れを受け継ぎ、また、新しく流れを作ったりしていき、まるで川の流れのように脈々と受け継がれてきた。今回はそのなかの一部を紹介する。

狩野派
狩野派は日本絵画史の上で室町時代末期から明治時代初期までの約400年にもわたり画壇の絵師集団である。狩野正信を祖として家系と画系を守ってきた。城郭、殿館、寺院などの大画面障壁画などを時代の価値観、支持層に柔軟に対応し権力者の支持を獲得していった。水墨画の唐絵を元に日本風が混じり、花鳥風月などの綺麗なものを抒情的に描いたものが多い。

住吉派
住吉派は初代如慶が天皇の拝命を受け、土佐派から分岐した流派で、息子の具慶が徳川将軍家の御用絵師になるという異例の大躍進をとげた流派である。江戸初期の王朝文化復興の機運にうまく乗じた流派。年中行事などを優雅で穏やかに、しかし装飾的に描いた。

琳派
琳派は家系ではなく、異なる時代、異なる地域に現れた、共通の特色、画風を持つ人たちの総称である。やまと絵と狩野派の技法をもとに、元来背景や山水画の一部であった草木を独立させ装飾画を確立。洒脱のきいた水墨画の線が特徴。

葛飾派
葛飾派の門人は当時の最大勢力歌川派と比べ職業絵師は少なく余暇で習うものが多く、現存しているものは少ない。またほとんどが肉筆画なのもこの派の特色といえよう。

歌川派
役者絵で名声を得た初代歌川豊国が興した流派。目をつり上げるようにして描き、鼻を強調し、輪郭も鋭角的に捉えた豊国の絵が門人にていった影響を与えていった。これらの様式が受け継がれることによって、異なる役者の絵でも似通ってくることがある。

参考文献
手嶋毅,菅原敦夫,室田秀樹『狩野派400年の歴史』「 映像情報メディア学会誌55 巻 1 号 p. 55-61」、映像情報メディア学会、2001年(参照2021-02-02)
ウィルソンリチャードL.,小笠原佐江子『尾形乾山 書・画作品と関係文書』 人文科学研究(キリスト教と文化)50号p.1-137」、国際基督教大学キリスト教と文化研究所、2018年(参照2021-02-02)
下原美保『住吉派研究史論:江戸時代の画論書にみる如慶,具慶像を中心に』 鹿児島大学教育学部研究紀要. 人文・社会科学編52巻p.1-20」、鹿児島大学、2001年(参照2021-02-02)
永田生慈『葛飾派門人録(未定稿)』、国際浮世絵学会、1981年(参照2021-02-02)
渡邉晃『文化期における歌川は役者絵の画風変化について:豊国・国貞を中心として』「日本美術研究2号p.57-79」、筑波大学芸術学系日本美術史研究室、2002年(参照2021-02-02)

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