B2-7 濡女
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作品名:『今昔続百鬼』巻二
作者: 鳥山石燕
書型:半紙本巻冊3巻1冊
出版: 安永8年 (1779)
所蔵: The British Museum (BM-JIB0147)濡女は、九州地方の沿岸部に出没し、出会った人の生き血を吸うという磯女に似た存在である。磯女同様、海や川に存在していたとされる。濡女という名称は、常に髪が濡れているという伝承から由来している。濡女の形状や性質、描かれ方は多様であるが、古典の妖怪画での濡女は、人面蛇体で描かれている。
島根県石見地方でいう「ヌレオンナ」は、「牛鬼」の女房といわれる。牛鬼とは、頭部が牛の形をした鬼、妖怪を指す。濡女が海辺に現れ、抱いている赤子を人に渡して海に入ると、牛鬼が現れる。頼まれた人間は、赤子を投げ捨てて逃げようとするが、赤子が重い石になって離れない。その為牛鬼に喰い殺されてしまうと伝えられている。従って、赤子を抱かされたときは手袋をはめて抱き、逃げるときは手袋ごと赤子を投げ出さなければいけない。
また濡女は牛鬼の化身との説もあり、島根の大田市の伝承では、濡女に赤子を預けられた男が牛鬼に襲われ、どうにか逃げ切ったところ、牛鬼が言った「残念だ、残念だ」との声が濡女と同じ声で言ったという説もある。(榎並)参考文献
多田克己『妖怪図巻』、国書刊行会、2000年
小松和彦監修『日本怪異妖怪大事典』、東京堂出版、2013年