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作品名:「女傀儡師」
出版:文化頃
絵師:行長
版型:細判合羽摺
所蔵:立命館ARC(arcUP0732)傀儡(くぐつ、かいらい)とは、人形遣いのことである。人形回し、山猫廻し、首掛け芝居、首掛け人形芝居とも言う。傀儡師(傀儡子とも表記される)は江戸時代に、首から木箱を下げ、腰に括り付けた太鼓を鳴らして町々を歩き回り傀儡芸を披露する旅芸人である。傀儡師は平安時代には存在しており、街道筋の宿場町や河口の港町に住み着き、芸能によって生計を営む集団であった。話の最後には「ちちくゎいくゎい」と言って終わる。これは操っている人形やぬいぐるみの鳴き声とされる。後に、いつまでも付いてくる子どもを追い払うために「ももんがゎあ」と言って箱からぬいぐるみを出して驚かせた。このぬいぐるみのことを山猫といい、そこから山猫廻しとも言われるようになった。
最初は木箱ではなく、「莎草(くぐ)」という植物で編まれた籠を使用しており、その編み籠から人形を自由自在に動かしていたことから「くぐつ」と言われるようになった。
手で人形を操っているところが直接観客から見えないように、糸などを用いて箱の中で人形を操る。箱の中で操れる程度の大きさであるため、指人形のようにすることもある。
女性の傀儡師は傀儡女(くぐつめ)とも呼ばれ、語りだけではなく傀儡芸に合わせて歌を唄ったりもしていた。描かれている女性の頭に巻かれている白い布は頭巾の役目を果たしている。傀儡師の多くは男性であるが、ほとんどの傀儡師が頭巾を被り、羽織を着流し、草履を履いていた。髪を結い、髪飾りをしている女性が頭巾を被るのは困難であったため、このような形になったと考えられる。反対に、女性でも頭巾を巻いているということは、傀儡師の正装であったということであろう。(甲斐)参考文献
松好斎半兵衛『戯場楽屋図会拾遺』上之巻(コマ16〜30)、1800年
宮尾與男『図説:江戸大道芸事典』、柏書房、2008年
A1-3-3 傀儡−人形遣い