A2-1-1 「子供遊勇当独楽」

作品名:「子供遊勇当独楽」
絵師:無款 、 落款印章: 玉斎画
判型:大判錦絵
出版:慶応4年頃(1868)
所蔵:国会国立図書館(NDL-458-02-045)

 独楽遊びは奈良時代、竹製の唐独楽が朝鮮半島を経由して中国から伝わり、寺や神社の余興として催されたといわれている。江戸時代以降は庶民の遊びとして相手の独楽に自分の独楽をたたきつけ、弾かれた倒れた方の負けという「けんか独楽」(当独楽)が主流となり全国に広まった。本作で描かれているのもこの「けんか独楽」である。また、本作は幕末の政治状況を風刺している作品でもある。向かって右側が新政府軍を表しており、幼児は明治天皇を、「サ」の字柄のかすりや萩文様の羽織は、それぞれ薩摩藩、長州藩を意味している。向かって左側で独楽をまわすのが旧幕府軍の庄内藩、会津藩などの諸藩である。また、勝負の成り行きを見つめている中央の子供は徳川慶喜を表す。風刺画は、人が絵を描くということを知った時から存在していたとも言われるほど昔から存在していた手法であり、世情をおもしろおかしく描いて楽しむという意味ではそれ自体が「あそび」の要素を含んでいるとも言えるだろう。独楽「あそび」の風景が風刺画「あそび」として描かれている本作は二重の意味で面白い作品である。(香川)

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