F3 三役早替り

作品名:「大日本六十余州 佐渡」
出版:文久1年(1861) 頃 大阪
絵師:国員
判型:中判錦絵(横絵)
所蔵:立命館ARC(arcUP2123).

早変わりとは瞬間的に役者が入れ替わり、同時に役を演じる四谷怪談の見どころの一つである。一般的に四谷怪談における著名な三役早変わりでは与茂七、小平、お岩をお岩を演じる場合が多い。ただし、今回の作品ではお岩と与茂七しか描かれていない。ただ、戸板返しであることからF2と同じ場面であり、小平が省略された構図となっていると考えられる。お岩は守り袋を持ち上げ、伊右衛門を恨む台詞を言う。その怨念に満ちた表情は言うまでもない。また、この後与茂七はだんまりをするうえで重要な構成員となる。新たな見どころであるだんまりの始まりを示唆しているのだ。お岩の恨みと新たな場面転換が同時に起こる瞬間を切り取った作品だ。(澤野)

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