H6 二人道成寺.

作品名:「せひし坊 片岡我童」「白拍子花子 中村芝翫」「白拍子桜子 市川団十郎」
上演:明治17年(1884)4月 東京・市村「春色二人道成寺
絵師:楊洲周延
判型:団扇絵錦絵
所蔵:立命館ARC(arcBK06-0004_057).

娘道成寺の白拍子を二人登場させるのが二人道成寺である。初演は4代目中村歌右衛門と2代目中村富十郎の「恋袂二人道成寺」。これが天保6年(1835)の大阪での上演で、江戸では天保11年(1840)に4代目歌右衛門と12代目羽左衛門が踊った「道成寺二人鐘入」が上演された。これらは白拍子がそれぞれ両花道から登場し、時に同じように、あるいは対となるように踊りを見せる作品であった。

なぜ二人の白拍子を出したのかだが、物語として必要であったわけではなく、当時の舞踊で人気であった役者を二人同時に踊らせるためであったと考えられる。道成寺が舞踊の代表的な作品であるために、白拍子にしたい役者は当然複数いる。見たい役者の舞踊を一度に見ることのできる作品がこの二人道成寺であると言える。(堀)