C0 忠臣蔵

 寛延元年(1748)8月大阪・竹本座で初演された人形浄瑠璃の作品。本外題「仮名手本忠臣蔵」。これも二代目竹田出雲、三好松洛、並木千柳の合作である。全十一段という長編であり、七段目に初代沢村宗十郎が演じた歌舞伎の廓場を取り入れたため、時代浄瑠璃の五段形式とは異なる構成となっている。
 本作もすぐに歌舞伎化され、江戸では、翌年の寛延2年(1749)3月から5月に掛けて森田、市村、中村の三座とも「忠臣蔵」を出して競演となり、その内容が江戸の人々の共通の知識となっていった。上演すれば必ず大当たりとなる「独参湯(気付け薬)」と呼ばれ、歴代の名優達が様々な工夫を凝らした演出を残してきた。
 高師直を斬りつけた罪で切腹させられた塩谷判官の復讐を、大星由良之助を中心とした家臣達が様々な苦難を乗り越えて果たすという物語。塩谷判官の切腹、城明け渡し、討入りなどの事件の主筋となる部分以外にも、五、六段目では思い込みから道半ばで切腹して死んでしまう早野勘平、九段目では、敢えて婿大星力弥の手に掛って落命する加古川本蔵などが脇筋として描かれ、単なる復讐劇というわけでない人間ドラマである。ちなみに、この作品も三人の作者が三様の切腹を描いている。
 現在でも知らない人がいないほど人口に膾炙しており、12月14日の討入日に合せて関係する地域ではさまざまなイヴェントが実施される。年末になると映画やテレビ、また舞台でも忠臣蔵を題材にした作品を見ることもできる。昨年(2019)は映画「決算!忠臣蔵」が、また、南座の顔見世でも、十五代目仁左衛門丈の由良之助を演じる七段目を鑑賞することができた。
 このコーナーでは、その中でも五段目と七段目を取り上げて「深読み」してみたい。(堀a.)

【参考作品】
作品名:「仮名手本忠臣蔵十一段続一覧之図」
出版:嘉永元年〜5年(1848〜1852)
絵師:歌川芳虎
判型:大判錦絵 3枚続
所蔵:立命館ARC(arcUP3657〜3659)