京都の花街名鑑の再開
アート・リサーチセンターには、江戸期の京都文化・芸能資料が数多く集ってきている。その中に、花街名鑑とジャンル分けできる『園のはな』があったが、天保の改革により、祇園そのものが閉鎖されてしまい、名鑑を出版できなくなったことは前に述べた。
その天保の改革の縛りがゆるみだすと、祇園は再び活況を取戻していったが、おそらく、嘉永の末には、天保改革以前の賑わいを見せ始めていたと思う。その理由は、やはり花街名鑑が復活しているからである。現在、やはりアート・リサーチセンターに所蔵されている『祇園新地歌妓名譜/全盛糸の音色』は、文久三年正月の刊記をもつ祇園花街名鑑である。
『全盛糸の音色』奥付
ここを見ると、出版人に当る人物として、「遊女屋取締総代 井筒屋庄兵衛」とあり、この出版物は、出版社側の企画ではなく、祇園の置屋組合によるものであったことが予想できる。ところが、序文末尾には、「嘉永七とせの春」と明記されており、序文はそのままで、毎年名鑑部分に変更を加えながら上梓されていたものということが予想できる。おそらくは、天保の改革のあと、名鑑を再開することになったとしがこの序文の年ではなかったかと思われるのである。
『全盛糸の音色』序
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