伊勢物語奥書 いせものがたりおくがき
写本、大本、1冊、江戸時代

大本、写本一冊。表紙は無地、濃い砥粉色。前後に遊紙一丁ずつで、十丁。一丁表に「伊勢物語奥書」とあり、書写来歴が記され、寛政元年の四月十三日に書写されたことがわかる。本文は漢文体で書かれている。

内容の構成は、以下の通り。
まず、冒頭に「物語根源古人説々不同…」とあり、物語名の由来が明らかでないことを提示する。「第一」の題名由来として「業平思人ニ伊勢ト云人有」ことを挙げ、「第二」の由来として「伊勢ヱ狩ノ使ニ下給フ」ことを挙げ、「第三」として「伊勢ノ二字ヲ男女ト読」ことを挙げ、「第四」として「イツトモナク女人来テ我モ此物語ニ哥ヲ入」たことを挙げ、「第五」として「イセノ国五十川邊ニ吉元ト云者有」ことを挙げている。
同様の形式で「昔男」と物語中で名乗っていることの理由、『伊勢物語』中に出てくる十二人の義人について箇条書きで書かれている。
最後に業平をはじめとして、『伊勢物語』の主要な登場人物について官位等を記した略歴が掲載される。
『伊勢物語』は藤原定家を中心に何度も書写されているが、その多くが「抑伊勢物語根源、古人説々不同…」で始まる定家の識語がついているので根源本系と呼ばれている。

本書には『伊勢物語』の本文はないが、この根源本系『伊勢物語』の奥書のみを書写したものと思われる。