漁樵
ぎょしょう
画題
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解説
画題辞典
漁と樵とは、山と水との別はあれ、共に俗塵を避け、天然の風物と同化するの境地にあるものなり。俗塵を厭ふの士、古来屡々その境過を羨望して詠ぜろ詩多し。樵。去々穿白雲、落葉無行路、但聞丁々声、不知束薪処(陸游)、負薪朝出売、沽酒日西帰、路人莫問帰何処、穿入白雲行翠微(許宣平)漁父。小舟軽似一鴎飛、恋月随風慣不帰、困臥蘆花深雪裏、夜寒添蓋旧蓑衣(許斐)、山下白雲縹渺、水辺紅樹依稀、信有桃源深処、漁人今亦忘帰(杜本)樵漁、或は一図とし、或は対幅として、古来屡々画かる。
西本願寺旧蔵に伝蘇東坂筆及円山応挙筆あり。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
漁は網を携へ或は竿を手にして河海池沼に魚を漁るもの、樵は斧を担ひて深山幽谷に分け入り薪を伐るもの、山と水との差こそあれ、大自然を友として悠々生を送る、亦一種の趣きなしとせぬ、これが為め此の両者を対照せしめて画に描くもの、詩題に上すもの古来その例枚挙に遑もない。
漁人 唐 蘇拯
垂竿朝与暮、披簔臥横揖、不問清平時、日楽滄波業、長畏不得間、幾度避遊畋、当笑釣台上、逃名名却伝。
漁翁 唐 柳宗元
漁翁夜榜西巌宿、暁汲清湘然楚竹、煙消日出不見人、款乃一声山水緑、廻看天際下中流、巌上無心雲相逐。
樵 明 黎拡
窈々径穿林下、丁丁斧徹雲間、耳慣猿驚鶴怨、跡窮紅樹青山。
樵者 宋 欧陽修
雲際依々認旧林、断崖荒磴路難尋、西山望見朝来雨、南澗帰時渡処深。
これを画いたもの昔から少くない。
伝蘇東波筆 西本願寺旧蔵
円山応挙筆 同
春日光親筆 編者蔵
渡辺崋山筆 『漁夫』 岸上家旧蔵
与謝蕪村筆 『柳蔭漁夫』 同
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)