雷不動北山桜

提供: ArtWiki
ナビゲーションに移動 検索に移動
印刷用ページはサポート対象外です。表示エラーが発生する可能性があります。ブラウザのブックマークを更新し、印刷にはブラウザの印刷機能を使用してください。

総合

なるかみふどうきたやまざくら


鳴神劇の系譜

初代市川団十郎

  • 貞享元(1684)年江戸中村座「門松四天王」にて鳴神初演。

※元禄6年~10年まで上京

※元禄10年5月息子九蔵(二代目市川団十郎)「兵根元曽我」で初舞台。

※元禄17(1704)年(宝永元年)初代市川団十郎死

二代目市川団十郎

  • 宝永7(1710)年江戸山村座「門松四天王」※初代団十郎七回忌追善
  • 享保11(1726)年江戸中村座「門松四天王」鳴神上人
  • 享保18(1733)年江戸市村座「桐栄山鳴神不動」鳴神上人

※寛保元年団十郎上京

七代目市川団十郎 ※歌舞伎十八番

  • 天保5(1834)年3月大坂角之芝居「鳴神桜」→はじめて「歌舞伎狂言尽拾八番之内」とする。
  • 天保5(1834)年7月江戸森田座「桜艶色鳴神(ゆめみぐさいろになるかみ)」→同じく「歌舞伎十八番之内」とする。


八代目市川団十郎

  • 天保14(1843)年6月江戸河原崎座「迷雲色鳴神(まよいのくもいろになるかみ)」
  • 嘉永4(1851)年5月江戸市村座「鳴神」

二代目市川左団次

  • 明治43(1910)年5月東京明治座「鳴神」→二代目団十郎の北山桜に帰ることを試みる。

鳴神劇の構成

絶間花道の出

『雷神不動北山桜』

花道よりそろ/\出て 滝壺の前に立

『鳴神』

トこの文句にて向ふより、当麻姫、着ながし、ふり袖の形り、肩に薄衣をかけ、松虫と撞木を持ち、しづかに出て来り、花道よき所に立ちどまり、矢張一セイ、滝の音

トこの浄るりの内、当麻姫、本舞台へ来り、滝へむかつて鉦をうちならす。鳴神、滝のもとへ、思入あつて

絶間姫の濡れ咄

  • 短冊の取り交わし(『雷神不動北山桜』、『鳴神』)
  • 川渡り(『成田山分身不動』、『雷神不動北山桜』、『鳴神』)
  • 口舌(『成田山分身不動』、『雷神不動北山桜』、『鳴神』)

鳴神が台より落ちる

  • 下座に落ちる(『源平雷伝記』)
  • 逆様に落ちる(『成田山分身不動』)
  • 鳴神壇上より落ちる(『雷神不動北山桜』、『鳴神』)

⇒一角仙人の当て込み(『成田山分身不動』、『雷神不動北山桜』、『鳴神』)

夫婦・師弟の契約

夫婦の契約(『源平雷伝記』)

師弟の契約、尼になる(『成田山分身不動』『雷神不動北山桜』、『鳴神』)

濡れ場

くどきの所作(『成田山分身不動』)

鳴神が絶間に憑依する(『雷神不動北山桜』)

癪の差し込み→鳴神の破戒(『鳴神』)

鳴神の生い立ち(『鳴神』)

鳴神の還俗(『鳴神』)

法の秘密を打ち明ける

酒⇒酩酊して行法の秘密を話す(『源平雷伝記』、『成田山分身不動』、『雷神不動北山桜』、 『鳴神』)

荒事

『源平雷伝記』

彼處に立ちし不動の台掻掴み、岩石古木を引倒し、顔色変つて怒らるゝ。同宿驚き止むれば、取つては投げ、掻掴み、競ひかゝる有様は凄じかりける次第なり。現人神か、鳴神かと、みな/\恐れて見えにけり。(鳴神=現人神になる)

『成田山分身不動』

大石古木引崩し縦横無尽に取つて投げ跡を慕うて追ひかくる

『雷神不動北山桜』

ト此内海老蔵〔鳴神〕顔を赤く塗る(・・・中略・・・)

ト夫より荒立に成 舞台中をめぐり/\探す 坊主皆々付廻る 此内 始終雷鳴る

ヤア あら無念 口惜やナア 寸前尺魔の障碍 仏罪を蒙つて秘法の行法を破れしよなア よし我 破戒の上からは 生ながら雷神となつて 彼女めを追かけんに何の難き事かあらん 天は三十三天 地は金輪奈落の底雨と成 風と成り(・・・中略・・・)

ト三重 大雷 大雨 どろ/\にて 海老蔵〔鳴神〕大荒れにて 此内投人形 投げ岩有て 向ふへかけては入ル 同宿皆々 師匠様/\と 慕い は入ル よろしく 幕

『鳴神』

鳴神「扨は、我行法をやぶらんと、雲の絶間といふ女、勅諚をもつて、ここに来りしより○そのたへまめを○ヤアラ、残念や、口をしやナア○寸善尺魔の障化仏罰、我破戒のうへは、生ながら鳴る神となつて、彼女たとへいづくにかくるゝとも、天は三十三天、地は金輪ならくの底○雨となり、風となり」

√東は奥州外が濱。

鳴神「西は鎮西鬼界がしま」

√南は紀の路那智の滝。

鳴神「北は越後のあらうみまで、人間の通はぬところ」

√千里もゆけ、万里もとべ、女をここへ引よせん。

トこの内、皆々とゞめるを、千鳥になりて、トゞ壇上へのぼり

√しんいのほむら舞あがり、

ト鳴神、引ぬくとお、総身一面の火炎となり、毛逆立て、きつと見え

√雲井はるかに鳴神か、あやしをそろし。

ト鳴神、柱巻の見得。これにて坊主みな/\、海老おれになる。大どろ/\、雷の音。この段きりにて、目出たく打出し。

荒事の成立

参考文献

  • 河竹繁俊著『評釈江戸文学叢書歌舞伎名作集上』(昭和10年、講談社)
  • 郡司正勝著『日本古典文学大系98 歌舞伎十八番集』(昭和40年、岩波書店)
  • 浦山政雄「鳴神劇の伝系」(『日本女子大学国語国文学論究』第1集、昭和42年)
  • 『元禄歌舞伎傑作集 上』(昭和48年、臨川書店)
  • 『歌舞伎台帳集成 第四巻』(昭和59年、勉誠社)