5724-C009

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個別解説:『俳優水滸伝豪傑百八人一個』シリーズの内の一枚である。画賛には烏帽子折求馬、大星、岡部六弥太、願哲、忍売、羽根川高景、長田景宗などの役名が見られる。歌舞伎年表、役者絵などで確認したところ、十二代目羽左衛門は、名乗り期間中に烏帽子折求馬と大星由良之助を勤めたことがあるが、ほかの役を勤めた記録が見られない。画賛では、羅列されている役が持つ特徴を借りて羽左衛門の藝を誉め立てているが、羽左衛門或いは羽左衛門の当たり役と水滸伝の豪傑の関係について言及していない。 本図の人物は、扮装から見ると、天保三年六月十八日より市村座で興行された『義経千本桜』の二番目『双蝶々曲輪日記』の濡れ髪長五郎に近似する。参考図002-1661。評判記『役者四季詠』(天保四年一月刊)では、羽左衛門の長五郎について「双てふ/\に長五郎こま蔵丈の長吉との出合宜しく」と評している。この芝居は、引窓の場で長五郎が武士の平岡郷左衛門を切る場面がある。本図は引窓の場だと考えられる。

個別備考:十二代目市村羽左右衛門の名乗期間は、文政四年(1821)十一月より嘉永三年(1850)十二月までとなっている。

画中文字:業<わざ>ハ海内無双<かいだいむそう>にして三都<さんと>の英雄<ゑいゆう>を驚<おどろ>かし面<おもて>ハ温順柔和<おんじゆんにうわ>にして女児<ちよじ>の目を悦<よろこ>ばしむ地藝<ぢげい>所作<しよさ>事<ごと>の奥儀を極<きハ>め昔<むかし>の人の調<しらべ>を替<かえ>たりこれを論<あげつら>へバ烏帽子折<ゑほしおり>求馬<もとめ>が幽玄<ゆうげん>大星<おゝぼし>が長高<ちやうかう>岡部六弥太<おかべろくやた>か濃<こう>なる願哲<ぐわんてつ>が鬼拉<きりう>忍売<しのぶうり>の麗<うる>ハしき羽根川高景<はねがハたかかげ>が有心<うしん>長田景宗<おさだかげむね>が有一莭<ういつせつ>それ/\諸躰<しよてい>そなハらざるハなし名にたち花<はな>の家<いへ>の株<かぶ>なぞらへてかく姿<すがた>の花押<はなおし>極<きわめ>の★★★