005-0405

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総合

東海道五十三対 品川


【翻刻】

品川

廿日関 邪 なき 雲を 打はらふ 幾千い中の 月の朴風 梅屋


絵師:国芳

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【題材・舞台】

この作品は歌舞伎の「浮世柄比翼稲妻」という四世鶴屋南北が書き下ろした芝居の一部ではないかと思われる。 また、この舞台は東海道品川宿の近くにある江戸の処刑場である。この処刑場は、鈴ヶ森刑場といい、現在の地名でいえば、品川区南大井2丁目付近である。近くは品川の海で、松林が続く中に1本大きな松があった。鈴ヶ森刑場は江戸に入る街道口に置かれた。刑場が通行人の多い街道沿いに配置したのは、犯罪の抑止力を狙ったからだそうである。



【人物】

この絵に描かれている人物は家紋などから白井権八ということがわかる。そして、この場面は白井権八が自分に言いがかりをつけようとした雲助ども十数人を切り捨てているところであると考えられる。



【品川】

東海道第一の宿場が品川である。現在では東京都品川区であるが、その昔は江戸の南の門戸として賑わいを呈した。品川宿は、東海道の第一宿であり、中山道の板橋宿、甲州街道の内藤新宿、日光街道・奥州街道の千住宿と並んで江戸四宿と呼ばれた。


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【類似作品】

舞台となっている品川宿近くの鈴ヶ森処刑場で、白井権八が人を切り捨てているという絵は、この絵以外にもいくつか見つけることができた。どの絵も鈴ヶ森処刑場の特徴とされている松の木が描かれている。歌舞伎ではまた、白井権八と幡随院長兵衛の出会いの場所としてでも有名である。白井権八がその見事な剣さばきで雲助ども十数人を切り捨ていくところを籠の中から見ていた幡随院長兵衛が、その腕前に感嘆して身柄を引き受けるという話があり、その場面が描かれている作品には、この作品に似た、白井権八が人を切り捨てているところと、その横に幡随院長兵衛が描かれているものもある。 また、この作品は出版地が江戸で国芳によって描かれたものだが、この作品と同じものを貞広が描いている。しかし、貞広が描いた絵は、品川だけではなく日本橋の絵も横に描いていて、出版地は大阪である。


【考察】

この作品に描かれている白井権八という役は、歌舞伎の世界ではとても有名で、絵にもたくさん描かれていることがわかった。そのなかでは、幡随院長兵衛と2人で描かれているものもあったが、白井権八が刀が持っている絵が多かった。白井権八が刀で人を切り捨てていく場面の絵は、松の木と石碑などがみられる品川の鈴ヶ森刑場の海の波打ち際であった。品川といえば、宿場の賑わいや、品川明神の祭礼などの風景画のほかに、風俗画としても多く描かれていて、東海道五十三次の日本橋の次に描かれている品川の絵は、前夜の賑わいから疲れ果てたような眠りからさめていないとされる品川の宿場を大名行列が静かに通りぬけるところが描かれている。このように、品川は賑やかで栄えているように思えるが、歌舞伎のなかで描かれている品川は、白井権八が人を切り捨てているといった宿場のイメージとは全く逆の品川を描いている。背景を暗くし、石碑を描いていることで人を切っていく場面の恐ろしさを引き立てているのではないだろうか。そして、この場面を品川の鈴ヶ森刑場を舞台にすることで、その時代の罪人が処刑されている場面を重ねてみることもできるのではないだろうか。




《参考文献》

『浮世絵事典』吉田映二著 画文堂 1971年

『新訂東海道名所図会』秋里籬島著 ぺりかん社 2001年

『広重と東海道』八谷政行著 人物往来社 1963年

『広重の東海道五拾三次旅景色』堀晃明著 人文社 1997年

『初期浮世絵と歌舞伎;役者絵に注目して』武藤純子著 2005年

『鶴屋南北世話狂言集(日本戯曲全集:第12巻)』鶴屋南北著 渥美清太郎編 1929年