<あらすじ>

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作州津山(岡山県津山市)の城主十八万石、森大内記長成の家にて英名と轟ろかしたる名古屋山三郎元春、不破伴左衛門重勝、高木牛之助一利の三人は幼いころ、蒲生下野守の家臣であり、蒲生三童子と呼ばれていた。

この三人がまだ蒲生下野守に仕えていたころ、法隆寺という今は人の住んでいない古寺があった。檀家もなく、時々行き倒れや無縁仏を葬るぐらいであった。そのため、誰が見たというでもないが世の中には「この寺には毎夜妖怪が現れる」と噂が立つようになった。

ある時、この寺に肝試しをしようと名古屋は二人にもちかけた。三人は普段から肝試しや百物語などして勇気のほどを試しあっていたのだ。しかし不破は、「大勢で行くのは卑怯。一人で行くことこそ肝試だ」と、この肝試しを断ってしまう。最初乗り気であった高木も「いや、お父さんが許してくれなくって・・」と行くのを断ってしまう。名古屋は「さては両人怖気づきやがったな」と思い、「じゃあ我も帰って休息しよう」とその場は別れたが、一人で妖怪を生け捕りにしてやろうと法隆寺に向かって行った。

名古屋が法隆寺に着くと、先客がいる様子である。よく見ると先刻分かれた高木であった。「いや実は、伴作が言うように一人で行ってこそ勇気を試すことになるかと思って、さっきは嘘をついてのだ」と言ったので、そこで二人で妖怪の正体を見極めようと本堂に登っていった。ひどく荒れた様子であったが二人は気にすることなく胡坐をかいて「普段、不破は立派な事言ってるけどさ、今夜は終に怖がってこなかったね。」「ほんと、威張ってばっかりのあいつの言葉はもう聞くに足りんわ」などと話しているうちに夜はふけてき、両人はうつら居眠りを始めた。と、本堂の前に、ドターっと物を投げ落とす音がした。名古屋は竹槍を持ち音のした方に突き刺すに、人間の体のような手ごたえがあった。しかし堂内は暗く、そこで高木は城下の酒屋に明かりを求めにいった。外は雪で、ようよう法隆寺に帰ると、名古屋は竹槍の刺さった死人を枕にいびきをかいていた。高木は驚いて起こすと、「いや退屈で寝ちゃったよ。」と言った。提灯にて死体を照らすと、どうやら四、五日経ったぐらいの男の亡骸である。「怪しいな。これは狐狸の仕業に違いない」というと、天井の梁からカラカラと笑い声がする。と、不破がヒラリと降りてきた。「実は帰ったように見せかけて、両人の度胸を試そうと思って、昨日あたりに埋めらしい墓を掘り起こして死体を梁に吊り上げて待ってたのさ。でも、牛之助が一人雪中に提灯を取りに行ったのもすごいけど、名古屋が即座に刺した死骸を枕に眠る度胸はほんと、勇士だと賞賛するほかないね」というと名古屋も「いやいや、不破が一番年下なのに大胆不敵なのは、我々の却って恥じる所だ」と互いにその勇気を感じいった。そのまま三人は寺で夜を明かしたが、一向に怪しい事もなく、妖怪が我々の勇気に恐れたか、またはただの噂であったかと、三人は屋敷に帰った。これより妖怪の噂は絶え、三人の勇士が伝わっていったのである。