龍
りゆう
画題
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解説
画題辞典
龍は雲に乗りて空中に飛翔する霊獣なり、本草綱目に曰く「形九似あり。頭駝に似、角鹿に似.眼鬼に似、耳牛に似、項蛇に似、腹蜃に似、鱗鯉に似、爪鷹に似、掌虎に似、背に八十一鱗あり、九々陽数を具ふ、口傍髪髯あり、頷下明珠あり、喉下逆鱗あり、頭上博山あり云々」支那にありては古くより四神の一にも数へられ、帝位に擬するに龍を以てするあり、画かるゝ所も随つて多く陳所翁の如き特に画龍に著にれたるものも出でたり、我が邦に於て、獨立せる画題として盛に諸家の筆に上りしは、北宗の画の伝はりて後のことにして、足利氏の末葉より桃山時代を経て江戸時代に至る、或に飛龍と称し、或は丸龍と称し、又は雲龍といひ龍虎といひ、若しくは虎と之を配して龍虎の對幅となす、江戸時代には、玉吸の龍、富士越の龍などいふものも画かれたり、絵の現存するもの殆んど万千を以て数ふべしと雖も.知られたるものゝ二三を例とし擧ぐれば、
牧渓筆(山城大徳寺所蔵)
陳所翁筆龍長巻(早崎梗吉氏所蔵)
劉祥筆(細川侯爵所蔵)
能阿彌筆(同)
雪村筆(同)
雪村筆(浅野侯爵所蔵)
狩野山楽筆(東京美術学校所蔵)
宅磨榮賀筆(佐竹侯爵旧蔵)
狩野松榮筆(森下某氏所蔵)
海北友松筆(京都妙心寺所蔵)
狩野探幽筆(秋元子爵蔵河内子爵其他所蔵)
俵屋宗達筆(東京帝室博物館所蔵)
同 (京都六島氏所蔵)
円山應擧隻(京都観智院所蔵)
就中、陳所翁筆雲行雨施巻と題せる長巻の如きに流石に画龍の妙手と推さるゝ筆だけのことありて活躍の妙人に迫るものあり、雨の日に取りて本巻を抜けば画中の龍は雲を呼びて天に昇るの懼ありと跋文にあるの偶然ならざるを感ぜしむ。禪宗の寺院に於てはその法堂の天井に龍を画くを習とす、今伝ばるものにして名高きもの左の如し、
狩野探幽筆(京都大徳寺法堂)
同 (京都妙心寺法堂)
又明治年間に於ける狩野芳崖が龍の骨格に就いて獨特の見解を下し、旧套を破りて構図せるものあり、普く世に知られたる逸話とす。尚ほ「龍虎」の條参照すべし。
(『画題辞典』斎藤隆三)