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すずき


画題

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解説

東洋画題綜覧

鱸は魚学上硬骨魚類に属し鱸科といふ一科をなしてゐる、その異名に『おほちう』『おほもの』『おほまた』『こちう』『またか』『ひらすずき』などがあり、体長く、縦に扁たく鱗は細かい、特長は脊鰭が二つあることで、前の脊鰭の形面白く、体色は蒼白色、腹部は白く、近海に棲息し、大概十五六尋の浅処を好み多少海藻などの生じてゐる処に棲息する、性甚だ貪欲で、小魚などを盛に追ひ廻し捕食する、秋の末十一月頃、淡水が鹹水に合する河口に産卵する、これが孵つて翌春四月頃には一寸位となる、そして河に遡つて来る、二寸位の大さまで『ふつこ』と呼び、五六寸になると『せいご』と呼び、七八寸になると又海に入り一尺位になつたものを『はね』更に大きくなり二尺位になると鱸といふ、昔から出世魚として名高く、『平家物語』の熊野詣の処に、鱸が舟中に飛入るを周武王の船に白魚の飛入つた故事などを引き吉兆として喜び祝ふたこともあり、成長する毎に名を改めるので出世の魚といふ。

古くから知られた魚で『古事記』天孫降臨の条に櫛八玉神が鵜となつて海底に入り、大口の小鰭鱸を釣寄せて奉ることも見え、『万葉集』にも鱸釣りの歌がある。

あらたへの藤江の浦に鱸釣る白水郎とか見らむ旅行くわれを  柿本人麿

鱸取る海人のともし火そよにだに見ぬ人ゆゑに恋ふるこの頃  作者不詳

鱸を描いた作

相阿弥筆          所蔵者不明

岡本豊彦筆         三河広中氏旧蔵

村上華岳筆         大正十四年個展出品

橋本静水筆  『遊魚』   第十六回院展出品

落合朗風筆         遺作集所載

堅山南風筆  『潜魚図』

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)