顔見世狂言
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かおみせきょうげん
総合
歌舞伎
歌舞伎年中行事の一つである顔見世興行に上演される狂言。 十一月一日から十二月十日頃までの興行で、十七世紀中葉から行われ、幕末まで続いた。 初日から三日間は座元が早朝「翁渡し(おきなわたし)」を舞う。江戸では宝暦前後から狂言の立て方も一定の法式がきまっていた。一日の狂言は「伊勢物語の世界」「保元平治の世界」「太平記の世界」「義経記の世界」等いくつかの限定された世界のうちから一つが選ばれ、一番目の時代物と二番目の世話物とに分れるが、全体は同じ世界で統一された狂言でなければならない。一番目の前に序開と二立目(ふたつめ)があり、三立目(みたてめ)が普通の序幕になる。一番目は三、四幕で、序幕は必ず神社の廻廊の場。その返しに「暫」か「だんまり」があり、新顔ぶれの幹部が登場する。四立日は筋に無関係な独立した浄瑠璃の舞踊劇。五立日、六立日は世話がかった狂言場。大詰は必ず金襖の御殿。謀叛人の見露し(みあらわし)、引張りの見得で幕切となる。二番目は江戸の市井を場面にとり、ぬれ場や喜劇的な世話場で、人物は最後に本性をあらわし、時代の役名に戻り、再び時代物にかえって終る。二幕の場合は大切に舞踊劇をつけるという手法になっていた。興行の最終日は「千秋楽」で座元(太夫元)が千秋楽を舞う。 京阪では江戸ほどの規定もなく、新座員の紹介、新狂言の発表、手打等の日上や儀式が主となり、狂言もごく軽い滑稽なお伽芝居で十日間ぐらい続ける。その後はお家騒動式の義太夫物で十日でらい興行して終る。