音にきく たかしのはまの あだ波ハ かけじや袖の ぬれもこそすれ

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 康和四(一一〇二)年に堀川天皇が催した、堀川院艶書合で詠まれた歌。この催しは、延臣の歌人と女房の歌人との間に恋愛贈答をさせ、それを歌合の形で披講したもので、紀伊の歌は中納言藤原俊忠の「人知れぬ思ひありその浦風に波のよるこそいはまほしけれ」という求愛の歌への返歌として詠まれた。

 俊忠の歌は、人知れず忍んでいるあなたへの思いがあるのだが、夜あなたをたずねてこの気持ちを伝えたい、という意。風の吹き寄せた波に、思う人の許へ寄って行こうとする男の恋心をたとえた俊忠の歌に対して、紀伊の歌は俊忠の暗喩の方法と歌の構成を受け継ぎながら、その恋心(波)は一時的ないたずらなものだと切り返し、拒絶の姿勢を示している。




・『新編 和歌の解釈と鑑賞事典』 井上宗雄、武川忠一編 笠間書院2000年

・『三省堂名歌名句辞典 』 佐佐木幸綱、 復本一郎編 三省堂2004年