雉子

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きじ


画題

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解説

東洋画題綜覧

雉は日本固有の鳥である、形態雄偉、色彩華美にして芸術とは最も深い交渉を有する、雌雄著しく色彩を異にし、雄は背が黒色、赤銅色、黄色より成る複雑な斑紋を呈し、雨覆羽及腰以下の部は灰青色、又は灰緑色で、上尾筒の羽毛は分裂して毛状をなしてゐる、体の他の部分は主として黒色で金緑乃至紫色の強い光沢を有する、後頭部には二個の耳状の羽起立し顔は大部分皮膚が裸出して美しい紅色を呈してゐる、尾は長くして楔状をなし美麗な十数箇の竹節状斑がある、種類としては朝鮮に高麗雉があり、形やゝ大きく頸に白色の輪がある、台湾には帝雉、台湾雉が居る、何れも台湾の特有のもので色彩は普通の雉とは余程異つてゐる。

雉は日本固有の鳥ではあるが、支那にも夙に知られて、華虫、夏翟、疏趾、原禽、文禽、介鳥、翟鶏、鷂鶏などの異名があり、また『焼野の雉、夜の鶴』と称され、母性愛の深い鳥としてよく知られてゐる。

春の野に求食る雉の妻恋に己があたりを人に知れつゝ

椙の野にさ躍る雉いちじろく啼にしも哭かむ隠妻かも

あしびきの八峰の雉なき響む朝けの霞見ればかなしも

             ――大伴家持――(万葉集)

雉子を画いた名作。

渡辺崋山筆  『渓澗野雉』    小坂順造氏蔵

雪舟筆    『花鳥屏風』の雉  大倉男爵家蔵

椿椿山筆   『春坡野雉』    高橋是清氏旧蔵

狩野周信筆  『松に雉』     東京帝室博物館蔵

酒井抱一筆  『花鳥絵巻』の雉  東京帝室博物館蔵

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)