都良香

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みやこの よしか


画題

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解説

前賢故実

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博識で強い記憶力を持ち、特に文章に長け、朝廷の法令制度にも精通していた。弱冠の歳で大学に入った。当時の書生の間では才能を以て傲り高ぶる風気があり、賢人と奸人が入り混じっているので、これを憎んで良香は弁薫蕕論を著して弊害を正そうとしていた。そして対策に及第し、その誉れが日増しに高くなった。良香の文章力は天性によるものだと著者が思っている。のち正六位上、少内記へ昇進、貞観十四年に掌渤海客使になり、從五位下を叙せられた。翌年、大内記、文章博士に任ぜられた。元慶元年、朝臣の姓を賜った。言伝えによると、かつて良香が羅城門を通るときに、自作の詩句「気霽風梳新柳髪(春の晴れた日に風が新しい柳の枝を梳き) 氷消浪洗旧苔鬚(氷の消えた水辺では浪が苔の鬚を洗っている)」を吟じると、楼門の上から賞嘆の声が聞こえてきたという。これについては時の人は不思議に思っていた。また、良香が竹生島に遊んだ際、「三千世界眼前尽(三千世界は眼前に尽き)」という句を詠んだが、これの対句を詠めなかった。すると、島之神が良香の句に続けて「十二因縁心裏空(十二因縁は心裏に空し)」と詠んだという。良香は仲雄王らとともに文華秀麗を編纂し、内裏式の編纂にも携わり、いくつの文集を残した。息子の在中が文才に秀でていた。

不才多愧業猶難(才能に欠け恥入るところが多くて、職務の遂行が難しくなったところ) 好是山荘一挂冠(幸に官職を辞して山荘に留まることができた) 夜鶴眠驚松月苦(驚きから目覚めた夜の鶴によって松と月の静寂が破られ) 暁鼯飛落峡烟寒(ムササビが飛降りていく夜明けの峡谷に立ち込めた煙が冷たい) 雲埋澗戸幽情積(雲が渓流沿いにある陋室を隠して奥ゆかしい雰囲気を醸し出し) 水隔寰中野性闌(川の流れが畿内に入ると野性を失い穏やかになった) 学路蹉跎年暗擲(学問の道を摸索している間に、時がむだに流れ去り歳を取ってしまった) 更栽籬竹養漁竿(以前とは違って籬に使う竹を栽培して釣り竿にする生活を楽しんでいる)

(『前賢故実』)