辻説法
つじせっぽう
画題
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解説
画題辞典
日蓮上人の建長五年始めて安房に日蓮宗を唱へて清澄山を逐はるゝや、五月鎌倉に出で松葉ケ谷に庵室を結び、日々街頭に出で通行の男女に法華経の功徳を説き、題目を高唱し意氣壮烈盛んに各宗を誹謗し、人の憤慨して或は乱暴を加ふるものあるも更に屈せず、熱心唯一宗の弘布に尽くす、之を日蓮辻説法という。
第一回文展に野田九浦の作あり、菱田春章が作は辰澤延次郎氏所蔵にあり、優秀の聞えありしものありしが大正震災に亡びたり。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
仏徒が辻に立つて衆生に説法すること、日蓮が鎌倉松葉ケ谷に於ける辻説法が世に名高い。此の題に於て画かれた作に
野田九浦筆 第一回文展出品
菱田春草筆 故辰沢延次郎氏蔵
がある、春草の作は開東大震災に焼失したといふ。
にちれんしょうにん「日蓮上人」の項を見よ。
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)
日蓮が小町に於ける辻説法は誠に好個の画題、烈々火の如き獅子吼と、群衆の叫喚、将に日蓮全伝中の白熱点とせらる。
ここに於てか日蓮、小町大路の真中に『南無妙法蓮華経』の法旗を立て、自ら路傍の大石に坐す、物見高き群衆雲の如し、日蓮は開口一番『聞けや我が説く処、年に四季あるが如く世には正法、像法、末法の三期あり、今や末法に入りて二百余年末法を施すべき時に際す、之は純円一実の法華経之なり、故に今の世に存する諸宗は悉く邪宗権教なり、邪宗に入り権教を奉ずるもの、争でか仏果を得、成仏を遂ぐべき、各々は皆阿鼻大城に墜ち、無間地獄に墜つべきぞ』と喝破し聴衆漸く動揺せしも日蓮は不然として『邪宗を信じ邪法を奉じて法華経を度外するは謗法なり、吾れは末法万年に法華経を広宣流布すべき如来の御使なり、速に来つて法華経の功徳を受けよ』ど滔々説くこと数万言、衆憤激怒号、瓦石杖木雨霰の如し、日蓮猛然として『我に忍辱の鎧あり妙教の剣あり、未顕真実の弓と正直捨権の矢とあり、悪口刀杖何かあらん』と更に怯る色なし。 (日蓮上人御一代記)
辻説法を画いた作
野田九浦筆 第一回文展出品
下村観山筆 竹内啓祐氏蔵
岩田正巳筆 第一回国画院出品
吉川霊華筆 古川伝七氏蔵
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)