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かいこ


画題

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解説

東洋画題綜覧

蚕は古くから知られた動物で、伝説に依れば黄帝の四妃西陵氏が初めてこれを養ひ糸を取つたといふし、又、伏羲氏に依つて養蚕といふことが創められたともいふ、動物学上からは蚕蛾科に属する虫で、桑を食べてゐる時代は即ち幼虫で蛾がその成虫である、はじめ卵から孵つた時は色も黒く小さい醜い虫であるが、成長するに従ひ四回脱皮し桑を喰ふことをやめて安静状態となる、これを眠りといふ、四眠から覚めると繭を作りはじめる、此の時稿を以て拵らへた『まぶし』をかけてやる、蚕は此の時全身透明となり稿の中に入つて繭を作る、繭は普通白色で俵状をなし時に楕円形のものもあり黄色のものもある。支那では、桑子、桑虫、又は馬頭娘、巧娘などゝも呼ぶ。

此の養蚕といふ業は、それ自体が趣きがあるので、よく画に描かれ、狩野一渓の『後素集』にも『養蚕之次第』十六項が挙げられてゐる。

下蚕之図 紙に付たる子を払ひ落し多少を撰む体。

鐶蚕之図 蚕の頭白く成て桑も出、葉をこまかにして食する。

蚕眠之図 蚕のねむりたる体。

採桑之図 桑をとる体也。

大起之図 蚕大きに成て少の間も桑をくはさればならぬ也。

上簇之図 蚕のまゆを作たる体。

炙箔之図 蚕をひやすまじき為め火をおく。

窖繭之図 糸を持たる蚕を壷へ入る。

繰糸之図 壷へ入たる蚕をとり出し糸とる。

蚕蛾之図 蚕蝶に成て亦子をうまする。

祀謝之図 蚕を仕舞て祝をし右の子の付たる紙を焼て捨る。

絡糸之図 糸の善悪を見、くりわくる。

経緯之図 糸のたて横をくりさだむる。

織布之図 機をおる体也。

攀花之図 紋おり付る。

剪製之図 織たる衣を剪たる体。

蚕それのみを画いた作

郷倉千靱筆   『生采扇面図』の中  第十九回院展出品

浜出青松筆   『蚕二題』      第十二回青竜社出品

養蚕を図したる作

喜多川歌麿筆  『女織蚕手業草』

勝川春章筆   『養蚕之図』

渡辺公観筆   『蚕飼時』      第八回文展出品

村上鳳湖筆   『桑と繭』      同

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)