虫撰

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むしえらみ


画題

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解説

東洋画題綜覧

古え殿上の逍遥とて殿上人たち、秋の暮に嵯峨野などへ行き、虫籠に虫を撰み入れて奉ること。

宮の若人たち、何宮或は内の宮の仰言にて、内野、鳥部野、栗栖野などにて、くさ/゙\の虫撰と申して、それかれなど奉るに、形のおどろ/゙\しうも、声の限をつくしをかしきもあり、又形は美しき玉虫などいひて、いみじけれども、蟋蟀、促織、絡線にさへ劣りて声立てぬもあれど、この虫が、やんごとなき幸あるものにて、宮の曹にて何くれの御局にも、御櫛笥の中なる白粉の中にまろひて、骸は人をさへ野辺にすてためるならひなるに、十年廿年の後までも、御物の中に包ませ置かせ給ふことよ、からやうの物等、雲井にまうのぼる、昔賢き人も草を耕して位にのぼりしをさへ珍らしきありがたき事に物するに殊にこれはやうかはれり、又浅茅が原の露深きあたり妹が門さしこめて語らふ頃、薄など生ふべき隈になき出でたる、昔物語めきて、あはれ限なかるべし。  (鴨長明―四季物語)

虫撰みを画いたものでは冷泉為恭に大作があり(岸上氏旧蔵)喜多川歌麿はその『虫類図譜』に『虫撰み』と題してゐる。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)