絵師双紙

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えしのそうし


画題

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解説

画題辞典

絵師双紙は藤原信実筆の名作にて御物なり。内容は信実の自伝とも見るべく、所得ある已が受領の地は権者の所縁に奪い去られ、才学を持ちながら所得なき遠隔の受領に任じ殆んど流罪に等しき様など、順序に随うて描かれたる絵巻なり。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

帝室の御物で、絵詞ともに藤原信実の筆と伝へられるが、『絵巻物小釈』には『実は大に相違し年代も降り、画系も異つた俗画である』といつてゐる。

内容は或る絵師が朝恩によつて伊予国を賜り大に喜び、家に帰つてこれを家族に話すと、皆々大喜びで赴任もせぬ先から年貢の納戸を工面するなどの騒ぎ方、やがて前夜の宴まで開いて打興じたが、扨て任地に使を出して探らして見ると、年貢は前の領主が取立てゝしまつて跡方なく、法勝寺の弁の所へ行つて見ると、その地も寺領になつてしまつてゐる、落胆して上卿に泣つく、上卿も気の毒に思つて其由奏上した、帝もあはれに思召し再び伊予の国を賜ふ詔があつたが遠隔の地に懲りて近き所へと願ふ、併し何時まで経つても御沙汰が無く、日に日に生活も苦しくなつて、遂に仏の道に志し、一人の子をも仏門に入れるといふ諷刺的絵巻である、その詞書の一節を引く。

『朝恩なれば、かたじけなく悦事かぎりなし此よし家にかへりてかたりければ、妻子眷属ともはしりつどひて、いまだ未到の土貢の納所を、もとめしたゝむるありさま、わらひののしるこえ/゙\天地をひびかして、物をとともきこえ侍らすにてありし、さるほどに老母をはじめとして、うとからぬ輩と賀酒をのみけるが、はやゑひぬれば乱舞一声におよぶままに、次第にのみしかりつゝ、酒又とりよせけるが、使もゑひぬれば、ゑんのやぶれに足を入れてたうれければ、酒をもこぼしぬ、使しかねて水を入くわへていたしたりけれども、皆ゑひぬる心ちには善悪をわきまへずして、其日はあしたよりのみくらし侍りけるとかや』

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)