篝火

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かゞりび


画題

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解説

画題辞典

篝火は源氏物語の一巻なり。玉蔓の君を源氏御子分とされしも、実子ならねば心の内には昔の夕貌のかたみにも見ばやなと思召され、夏の夜の月なき頃、すこし曇りしに篝火焚き、琴しらべ玉いて、源氏、「かゞり火にたちそふ恋のけふりして 世には絶えせぬほのほなりけり」とよまる。琴を枕に諸共に添臥し玉うとなり、源氏絵の一として画かる。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

(一)赫をかゞると読ませ篝火といふ、鉄の籠に柱があつてこれにかけ、籠の中に木を焚く、長良川の鵜飼には、鵜篝あり、京都円山の夜桜には花篝あり、何れもよく画に描かれ又、鎌倉時代には、京都市中警固の為め辻々に番屋を設け、終夜篝火を焚くので、篝屋の名もある。時に合戦絵などによく篝火は画かる。

(二)『源氏物語』五十四帖の中、源氏三十七歳の時のことを記す、玉蔓の君を源氏の子分とはしたが、扨て心の中には昔の夕顔のかたみなど思ひ出してゐる、夏の夜の月のない時、少し曇るまゝに篝火を焚き琴など調べる、その一節に

御琴を枕にて、諸共に添ひ臥し給へり、かゝるたぐひあらんやと、うち歎きがちにて、夜ふかし給ふも人のとがめ奉らんことを思せば、渡り給ひなんとて、御前の篝火少し消えがてなるを、御供なる右近の大夫を召して、ともしつけさせ給ふいと涼しげなる遣水のほとりに、気色ことにひろごりたる、檀の木の下に、うちまつ、おどろ/\しからぬ程におきて、さししできてともしたれば、御前の方はいと涼しくをかしき程なる光に、女の御さま見るもかひありて、御髪の手あたりなど、いとひやゝかにあてはかなる心地して、うちとけぬさまに物をつゝましと思したる気色いとらうたげなり、かヘリうくおぼしやすらふ、絶えず人さぶらひて灯つけよ、夏の月なきほどは、庭の光なき、いとものむつかしく、おぼつかなしやとの給ふ。

篝火にたちそふ恋のけふりこそ世には絶えせぬほのほなりけれ

源氏絵として極めて優艶な画面が画かれる。例少くない。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)