甕破柴田

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かめわりしばた


画題

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解説

東洋画題綜覧

戦国の武将柴田勝家の逸事で、豪胆敵の使者を驚かし遂に大勝して信長の感状を得るに至る、古来甕破柴田と称して歴史画の好画題とされてゐる。

永禄十二年佐々木承禎、柴田勝家が守る所の長光寺の城をかこみて攻め、遂に惣がまへを打破る、勝家本丸に有りて爰を専途と防戦ふ、郷民佐々木が陣にゆきて此城は水の手遠く遥なる所より水をとり候、それを取り切る程ならば城は保つべからずと告げしらせければ、承禎悦び水の手をとり切たり、城中是に困めどもよわれる色をあらはさず、承禎これを見ん為めに和平せんとて平井甚介を使にして城中に入らしめたり、平井勝家に対面し手水を請ふ、缸に水みちたるを小姓両人してかき出たるに平井手を洗ければ小姓残れる水を庭にすてたり、平井帰てかく云へば事のたがひたる故にあやしみあへり、かくて城中既に水竭ければ、勝家明日は討て出で切死せんとて諸士をあつめ最期の酒宴す、残れる水を問ヘば二斛計入べき缸をかき出す、さらば此間の渇をやめよとて人々汲のみてければ、勝家眉尖刀〈なぎなた〉の石づきにて缸を砕たり、夜明方に門を開打て出る、佐々木思ひもよらざれば大に敗北しければ、勝家首八百余級を得て岐阜に献ず、勝家は猶長光寺にあり、信長感状をあたへ賞せらるゝ事大方ならず、是より勝家を缸わり柴田と世に称しけり。  (常山記談)

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)