猪牙船

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ちょきぶね


画題

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解説

東洋画題綜覧

ちよきは艪の音の形容、ちよろと云ふ小舟もこれであるといふ、或は云ふ、長吉といふ者が作り始めたので長吉船とも云つたと、或は形猪牙に似たからと云ふ、小舟の名で、細長く舳尖る、昔、専ら江戸山谷通に用ひた、進むこと至つて早いが甚だしく動揺する、艪を二挺立てゝ漕いだのは更に早い、因つて舟を二挺立とも云ひ此舟に屋根をつけたのを『きりぎりす』と呼んだ、舟揺れて二挺の艪のきりきりと鳴るからである、又三挺立もあつた、共に正徳三年禁止された。  (大言海)

山谷通ひの小舟は、長吉といへるもの作り出せし故に長吉舟といひたるを、いつの頃よりかちよき舟といひ習はし文字さへ猪牙と書替たりと、沾涼が江戸砂子にも見え侍る、左もありしか、又一説に此ちよき舟を作り出せし元祖は兵庫屋何某とか云て、むかし今戸堀のはたに住居せし由(中略)此兵庫屋の家殊に栄えて今戸橋の北の川端に住居して舟を作る事を業とす、当時兵庫屋吉兵衛といふは始祖より八代目なりと、今是にたよりて聞くに、長吉といふ者はたしかならず、もし作り出せし頃、其舟の形漣に動くを見て、猪牙と呼初めしにや知らず、此舟すみやかにはしらんことを工みて、さんちやうの艪をかけたりしが、後に御制禁有てやみぬ。  (洞房語園異本考)

猪牙舟を画いた作浮世絵に珍らしくない。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)