牡丹灯記

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ぼたんとうき


画題

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解説

東洋画題綜覧

『牡丹灯記』は『剪灯新話』中の一篇で、明の瞿佑の著、瞿佑字は宗吉、存斎と号した、此の一篇は三遊亭円朝によつて翻案され、『牡丹灯籠』として人口に膾炙されたところである。

鎮明嶺下に喬生といふ者があつた、妻を失ひ怏々として楽しまず、唯門に侍りて佇むばかり、十五夜三更尽き人の往来も稀となつた時一人の婢双頭の牡丹灯を挑げて先に歩み、あとから一美人の歩むを見る、年の頃十七八、絶世の美人である、喬生恍惚として尾いて行くと、女も振返つて言葉を交した、そして婢を顧み、金蓮灯を挑げて共に行けと、喬生と女とは相携へて家に入つて、开で喬生は改めて女の名を聞くと『姓は符、麗卿はその字、淑芳は其名、奉化州判の女』と、答へた、その夜、女は喬生の家に泊つた、それから二人の契は濃かになつて、女は暮に来ては翌朝早く帰る、隣家の翁、之を怪しみ窃かに覗くと喬生と灯下に並び座するは一の髑髏であつた、翁は驚いて之を喬生に語り之を誡め、女は湖西に住むといへば往いて之を物色せよといふ、喬生も驚いてその言葉の通り湖西を探したが見当らず、漸く東の廊下の果に棺があつて故奉化州判の女麗卿の柩とあり、牡丹灯が供へてあり、灯下には金蓮と記した葬具の人形が一基立つてゐた、喬生之を見て慄然肌に粟を生じ恐れ戦いて再び女のことを思はなかつたが、一ケ月過ぎ、友の家で酒を飲み酔て戒を忘れ湖心寺に入らうとすると金蓮は出迎へて西廊の室に入つた、女は怨言を繰り返しながら手を取つて柩の前に到つた、柩の戸は自然に開いて二人はその中に入つたまゝ出て来ない、そして僅かに喬生の衣の裾が蓋の外に現はれてゐた、寺僧が驚いて之を開いた時は、喬生も既に白骨となつて、女の屍と並んでゐた。

これを画いた作

鴨下晁湖筆  第四回帝展出品

小林三季筆  第廿一回院展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)