橘直幹

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たちばなの なおもと


画題

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解説

前賢故実

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長門守の長盛の子。文章博士。博士が他の官職を兼任する先例があり、直幹は申文を作成、小野道風に書写して頂いた上で、天皇に提出した。申文の概略は「官職を拝する御恩は何よりだ。人によって事情が変わったりして不公平にも見えるが、人それぞれの栄枯の分があるのだ。天の代わりに官職を授かる御上の公正と明察に、人々の運命が懸っている。」という内容であった。村上天皇は、初めは不愉快に思ったが、のちに「顔淵は飲食に屡々困り、陋巷にある住いに草が茂っていた。原憲は粗末な食事にするための藜藿に囲まれ、家の扉の枢が雨で濡れていた。」と言った。さらに「名高い当世の文士が、ここまで困っていたとは、朕の過失だ。」と歎き、直ぐに直幹を民部大輔に任命した。直幹の文と道風の書は、当時の人々に「二絶」と呼ばれていた。

蘭気入軽風(蘭の香りがやさしい風に乗って漂う)

香蘭衆草種相分(香蘭と雑草は種類が違い) 況入軽風気不群(その香りがやさしい風に乗って漂うとさらにほかの草とは異なる) 臨水襲来魚底浪(魚たちの底より大きな浪が水辺に押寄せてきて) 満皐吹染鶴間雲(風に乗った蘭の香りは沢の隅々に渡り、鶴の間にある雲にまで移った) 曲驚楚客秋絃馥(異郷で暮す客が曲に驚かされ、秋の琴線に馥郁たる香りが立ちこめている) 夢断燕姫暁枕薫(美しい女性が夢から目覚め、暁の枕にまで薫りが残っている) 移植若逢新雨露(香蘭をほかの所へ移植し、新しい雨露に出逢えば) 毎秋猶欲播清芬(毎年の秋にまた清らかな香りを広く移っていくだろう)

(『前賢故実』)