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すぎ


画題

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解説

東洋画題綜覧

杉は松柏科の常緑植物で、諸国の山地に自生し又到る処に植栽せられて森林をなしてゐる、支那にも産し、杉、或は椙の文字で呼んでゐる、『日本書紀』や『万葉集』では須擬といひ『本草和名』には『須岐之岐』と訓じ、『新撰字鏡』には『須支の木』といふ、幹は端直にして高く聳え、産地によつて生長は不同であるが五十年で幹の高さ八丈、囲り四尺ばかりになる、老大なものになると高さ二十五丈、周囲二丈八尺に及ぶものがある、樹皮は厚くして赭褐色、枝は整斉稠密で四方に伸び、樹の形は正しい円錐形を為す、葉は小枝上に密生して螺旋形に排列し、剛くして稍々内方へ彎曲し線状錐形にして先が尖り長さ四五分、花は単性で雌雄同株である、三月の末頃小枝の頂に雄花と雌花をつけ、秋になると小鈴のやうな毬果を結ぶ、四分ほどの大さである。

杉は斯く日本固有の重要な森林植物であるから、日本の山水は到る処此の樹木に依つて装はれ彩られ特殊の景観をなしてゐる、殊に大和の吉野、遠江の天竜川上流の如きは、杉の自然林で有名であり良材を出すので名高く、種類には猿猴杉天鵞絨杉、糸杉、北山杉などの種類がある。

春くれば杉のしるしと見えぬかな霞ぞ立てる三輪の山もと  刑部卿頼輔

あふさかの関の外山も明けやらで霞よこぎる杉のむら立   藤原業清朝臣

杉の画かれた名作は極めて多い、主なものを挙げる。

無款     『鋒杉』襖絵      京都妙蓮寺蔵

円山応挙筆  『春景山水』      藤田男爵家蔵

松村呉春筆  『天狗酒宴図』     浜松中村氏旧蔵

飛田周山筆  『幽居之秋』      第十一回文展出品

同      『神泉』   第十一回帝展出品

矢沢弦月筆  『室生の夕ばえ』   第十三回帝展出品

松本姿水筆  『このまの秋』   第九回帝展出品

西沢笛畝筆  『杉』   久邇宮邸御杉戸

山口蓬春筆  『秋影』(北山杉)   昭和十四年文展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)