本間孫四郎

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ほんままごしろう


画題

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解説

東洋画題綜覧

馬術の名人で、新田義貞の臣、『太平記』十三『竜馬進奏』の条にその名現はれ、十六巻には遠矢で『みさご』を射る物語が載せられてゐる、曰く。

新田足利相挑みて未戦処に、本間孫四郎重氏、黄栗毛なる馬の太く逞しきに、紅下濃の鎧着て只一騎和田の御崎の波打ち際に馬寄せて漁なる船に向ひて大音声を挙げて申しけるは、将軍筑紫より御上洛候へば、定めて鞆尾道の傾城ども多く召具され候ふらん其為に珍しき御肴一つ推して進らせ候はん、暫し御待ち候へといふまゝに、上差の流鏑矢を抜けて羽の少し広がりけるを鞍の前輪に当ててかき通し、二所籐の弓の握太なるに取り副へ、小松陰に馬を打ち寄せて浪の上なる『みさご』の己が影にて魚を驚し飛びさがる程をぞ待ちたりける、敵は是を見て射外したらんは稀代のわらひかなと目を放たず、御方は是を見て射当てたらんは時に取りての名誉かなと機を攻めてぞ、守りける、遥に高く飛び挙りたる『みさご』、浪の上に落ちさがりて二尺ばかりなる魚を主人のひれを掴みて澳の方へ飛び行きたる処を本間小松原の中より馬を懸出し追様に成りて、かけ鳥にぞ射たりける、態と生きながら射て落さんと片羽がひを射切りて直中をば射ざりける間、鏑は鳴響きて大内公が船の帆柱に立て、『みさご』は魚を掴みながら、大友が船の屋形の上へぞ落たりける。射手誰とは知らねども、敵船七千余艘には舷を踏みて立ち双び、御方の官軍五万余騎ぼ汀に馬を控えて、あ、いたり/\と感ずる声天地を響して静り得ず。

と、一寸場面が那須与一に似てゐる、これを画いたものに鈴木其一の作がある。(松沢家旧蔵)

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)