春風馬堤曲

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しゅんぷうばていきょく


画題

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解説

東洋画題綜覧

安永三年俳人蕪村が淀川(淀河)を渡つて故郷へ帰らうとした時、不図可憐な美女に逢ひ、やゝ暫く語り合つて別れたが、その時の情を歌つたものがこれで、俳句の形式や詩の律や、筆に従つて書いた一種の自由詩で誠に画趣横溢、左にこれを引く。

     春風馬堤曲     謝蕪村

余一日問耆宿於故国、渡澱水、過馬堤、偶逢女帰省郷者、先後行数里、相顧語、容姿嬋妍、痴情可憐、因製歌曲十八首、代女述意、題曰春風馬堤曲。

○やぶ入や浪花を出でゝ長柄川

○春風や堤長うして家遠し

○堤下摘芳草、荊与蕀塞路、荊蕀何妬情、裂裙且傷股。

○渓流石点々、踏石撮香芹、多謝水上石、教儂不沽裙。

○一軒の茶見世の柳老にけり。

○茶店の老婆子儂を見て慇懃に無恙を賀し且儂が春衣を美む。

○店中有二客、能解江南語、酒銭擲三緡、迎我譲榻去。

○古駅三両家猫児妻を呼妻来らず。

○呼雛籬外鶏、籬外草満地、雛飛欲越籬、籬高堕三四。

○春草路三叉中に捷径あり我を迎ふ。

○たんぽゝ花咲り三々五五、五五は黄に。三々は白し記得ず去年此路よりす。

○憐みとる蒲公、茎短して乳を浥。

○むかし/\しきりにおもふ慈母の恩。慈母の懐袍別に春あり。

○梅は白し浪花橋畔財主の家。春情まなび得たり浪花風流。

○郷を辞し春深し行々て又行々。楊柳長堤、道漸くくたれり。

○嬌首はじめて見る、故国の家。黄昏戸に倚る白髪の人。弟を抱き我を待、春又春。

○君不見、古人太祇の句、薮入の寝るやひとりの親の側。  (夜半楽)

これを絵巻風に画いたものに小杉放庵の作がある。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)