新形三十六怪撰

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新形三十六怪撰

大蘇芳年筆。出版明治二二年(一八八九)~二五年。全三十六点。他に目次一点。版元佐々木豊吉。

「鐘」を除いて、すべて平安時代~江戸の歌舞伎までの日本の幽霊、化物、怨霊、動物の精などを描いたシリーズで、芳年の晩年の傑作である。絵の枠自体が虫食い状態になっており、新形と神経を重ね合わせた題とともに、神経症に病んでいた芳年を暗示している。「老婆鬼腕を持ち去る図」は柴田是真が神田明神に寄進した絵馬と似た図で、芳年が師の国芳のみならず多くの作品を学んだ様がわかる。「四ツ谷怪談」で屏風から蛇のように鎌首を持ち上げる帯は歌舞伎のも見られぬ趣向で、子供を抱くお岩の不安を象徴的に表している。シリーズ全体は有名な物語が描かれているが、「茂林寺の文福茶釜」の僧に変身した頼豪、「葛の葉のきつね」の障子に映るきつねの影など、随所に芳年独自の工夫が見られる。(及川茂)



『新編日本古典文学全集34 大鏡』 橘健二 加藤静子 小学館 平成8年年6月