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まぼろし


画題

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解説

画題辞典

源氏物語の一巻に幻あり.源氏最愛の夫人紫の上を失うて朝夕思ひわするゝ事なく、

 大空を通ふまぼろし夢にだに 見へぬと玉の行衛尋ねよ

とあり、またのとし三の君のかたみの紅梅に鶯啼けるも知らずかほなりとて、

うへて見し花のあるしもなき宿に 知らす歌にも来ぬる鶯

とあり。

源氏絵の一として画かる。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

源氏物語』五十四帖の中、源氏五十二歳、紫の上の病重り遂に世を去る、その一週忌までを舒す、流石に源氏が悲嘆のさまよく描かれてゐる、巻の名は

神無月は、大かたもしぐれがちなる比、いとゞながめ給ひて、夕暮の空の気色などもえもいはぬ心ほそさにふりしかどとひとりごちをはす、雲ゐをわたる雁のつばさも、うらやましくまもられ給ふ

大空をかよふまぼろし夢にだに見えこぬたまのゆくへたづねよ

の一節から来てゐる、なほ此のあとは三の君がかたみの紅梅に鴬の啼くを

二月になれば花の木どもの盛になるも、またしきも木末をかしう霞渡れるにかの御かたみの紅梅に鴬の鳴き出でたれば、立ちいでて御覧ず

植ゑて見し花のあるじもなき宿に知らずがほにてきぬる鴬

の優艶なる画面があり、源氏絵としてよく画かれてゐる。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)