帰去来

提供: ArtWiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

ききょらい


画題

画像(Open)


解説

画題辞典

帰去来辞は、陶淵明の作なり。陶淵明、官に就き、彭沢の令となる、歳末郡の督郵来らすとす、吏淵明に勤め束帯して之を迎えしむ、淵明嘆して曰く、吾れ五斗米の為めに腰を郷里の小児に屈せんやと、即日印綬を解いて去る。帰去来の辞は即ち此時に作りて志を表わせしものなり。王陽修之を評して曰く「吾に文章なし唯淵明が帰去来辞あるのみ」と云う。帰去来辞に曰く「帰去來兮、田園将蕪、胡不帰、既自以心為形役、奚惆悵而独悲、悟已往之不諫、知来者之可追、実迷途其未遠、覚今是而昨非、舟遙遙以軽颺、風飄飄而吹衣、問征夫以前路、恨晨光之熹微、乃瞻衡宇、載欣載奔、僮僕歡迎、稚子候門、三径就荒、松菊猶存、携幼入室、有酒盈罇、引壺觴以自酌、眄庭柯以怡顏、倚南窗以寄傲、審容膝之易安、園日涉以成趣、門雖設而常関、策扶老以流憩、時矯首而遐観、雲無心以出岫、鳥倦飛而知還、景翳翳以将入、撫孤松而盤桓、帰去来兮、請息交以絶游。世与我而相違、復駕言兮焉求、悅親戚之情話、樂琴書以消憂、農人告余以春及、将有事於西疇、或命巾車、或棹孤舟、既窈窕以尋壑、亦崎嶇而経丘、木欣欣以向栄、泉涓涓而始流、羨万物之得時、感吾生之行休、已矣乎、寓形宇内復幾時、曷不委心任去留、胡為乎遑遑欲何之、富貴非吾願、帝郷不可期、懐良辰以孤往、或植杖而耘耔、登東皋以舒嘯、臨清流而賦詩、聊乗化以帰尽、樂夫天命復奚疑」尚、陶淵明の条参照すべし。帰去来を図せるもの多きが中に左の諸点名品と見るべし。

宋趙大年筆(赤星鉄馬氏旧蔵)、狩野元信筆(京都西本願寺所蔵)、谷文晁筆(京都室町伯爵所蔵)、同(村上某氏所蔵)。最近に於ては橋本雅邦、横山大観等の作あり。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

『帰去来』の辞は陶淵明の作る処、陶淵明官に就き彭沢の令となる、或る歳末に偶々郡から督郵を遣はして県に至らしめた時、吏、淵明に束帯して之に見ゆべしといつたのに、淵明歎息して、『我豈能く五斗米の為に腰を折りて郷里の小児に向はんや』といつて、即日に綬を解いて職を去り、此の時に此の辞を賦したとある、その序の中にも衷情を叙してゐる。帰去来辞は左の如し。――参照陶淵明――

     帰去来辞     陶淵明

帰去来兮、田園将蕪、胡不帰、既自以心為形役、奚惆悵而独悲、悟己往之不諌、知来者之可追、実迷塗其未遠、覚今是而昨非、舟揺揺以軽颺、風飄飄而吹衣、問征夫以前路、恨晨光之熹微、乃瞻衡宇載欣載奔、僮僕歓迎、稚子候門、三径就荒松菊猶存、携幼入室有酒盈樽、引壷觴以自酌、眄庭柯以怡顔、倚南窓以寄傲、審容膝之易安、園日渉以成趣、門雖設而常関、策扶老以流憩、時矯首而遊観、雲無心以出岫、鳥倦飛而知還、景翳翳以将入、撫孤松而盤桓、帰去来兮、請息交以絶遊、世与我而相遺、復駕言兮焉求、悦親戚之情話、楽琴書以消憂、農人告余以春及、将有事于西疇、或命巾車、或棹孤舟、既窈窕以尋壑、亦崎嶇而経丘、木欣欣以向栄、泉涓涓而始流、善万物之得時、感吾生之行休、已矣乎、寓形宇内、復幾時曷不委心任去留、胡為乎遑遑欲何之、富貴非吾願、帝卿不可期、懐良辰以孤往、或植杖而耘耔、登東皐以舒嘯、臨清流而賦詩、聊乗化以帰尽、楽夫天命復奚疑。

『帰去来』を画いた作

狩野山楽筆丈山賛  松沢家旧蔵

宋趙大年筆     赤星家旧蔵

狩野元信筆     京都西本願寺蔵

谷文晁筆      京都室町家蔵

橘田永芳筆     昭和十二年文展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)