小野御幸

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おのごこう


画題

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解説

画題辞典

白河院が或る朝深雪の降りけるを見て、俄かに雪景色見んと思い立ち、兼ねて洛北小野の里に世を避けて閑居し玉う小野皇太后(後冷泉天皇女御藤原歓子の方)の許に駕を命じて行幸なる。太后の侍女命を奉じて豊酒を勧む、院敢て入らず、雪を車上に見る、左右之を問えば即ち曰く、朕雪を見る、何ぞ入るを須へんと、即ち還る、之を小野御幸ともいう。東京美術学校に伝土佐経隆筆小野御幸絵巻一巻あり。                (『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

白河院がある雪の日、俄かに雪景色を御覧の為め洛北小野に御閑居在す小野の皇太后宮を訪はせ給ふ、皇太后宮は後冷泉院の后藤原歓子の方である、その物語は、『古今著聞集』『今鏡』『十訓抄』等に記さる、『著聞集』を引く。

白河院、深雪の朝、雪見の御幸あるべしとて、御供の人少々召さるゝ事、ほのきこえし程に、やがて出御ありて、『おもしろき雪かな、いづかたへかむかふベき、小野皇太后宮のもとへ向はばや』と仰せられけるを、御随身承りて、従者を馬にのせて、彼の宮へ馳せまゐらせて『かゝる事に、既に御車に奉りて候ふなり、御用意侯ふベし』、と申したりければ、紅の衣五具ありけるを、せわりにふつと切りて、寝殿十間になむ出されたりける、『みづから入りて御覧ずるもあらばいかゞ』と申す人ありければ、皇太后宮雪見る人は内へ入ることなし』とて、さわぎたる御気色なくてなむ、おはしましける、さる程に、やがて御幸なりて、御車やり入れて、階隠の間にさしよせておはしましければ、みきをなむ勧め奉られける、朽葉のかざみ著たる童二人、一人は沈の打敷に玉の盃、銀の皿に金の橘一ふさを盛られたるをもちたりけり、一人は片口の銚子に酒を入れて持ちたり、二人の童、寝殿の前をへて、階の子を斜におり下りて、御車へまゐりけるさまいみじく優になむ見え侍る、酒はうるはしうならせ給ひける、橘は季通御供に候ひけるに賜はせけり、上皇かへらせおはしけるまゝに、『ゆかしくなつかしげにてこそおはしましけれ』とて、庄一所まゐらせられたりければ、たゞ今御幸なるよし告げ参らせたりける御随身になむ、あづけ給ひける。  (古今著聞集巻十四)

これを画ける作としては、東京美術学校に、土佐経隆筆『小野御幸絵巻』一巻があり、松岡映丘に『小野の雪』(昭和三年尚美展出品)大坪正義に『雪見の御幸』(第六回文展出品)がある。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)