安蘇沼

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阿曾沼の鴛鴦(あそぬまのをしどり)

雌雄鴛鴦の哀れをとどめる説話。この話は「古今著聞集」と「沙石集」との中に採録せられ、その後諸国に於ていろいろ変化して行はれている。陸奥田村郷に住する馬某という男が鷹狩りの帰途、赤沼において一番の鴛鴦のうち雄鳥を射、鷹に与えた。その夜の夢に「なまめきたる女」が枕上に来て夫を殺された」怨みを述べ、「日くるればさそひしものをあかぬま(赤沼)のまこもがくれのひとりねぞうき」という歌を詠んで泣く泣く去った。奇怪に思って餌殻の入った餌袋をとりだしてみると、雌鳥が雄鳥の嘴をくわえて死んでいた。これを見てかの馬某は出家した(『古今著聞集』)。下野安蘇郷に一人の鷹使いがあった。安蘇沼で鴛鴦の雄を捕って帰ると、その夜に「尋常なる女房」が現れてさめざめと泣き、夫をなぜ殺したと詰問の末、「日暮るればいざやといひしあそ(安蘇)沼の真薦のうへに独りかもねむ」と詠んで飛び去った。明くる朝雌雄が嘴をくわえあって死んでいた。鷹使いはこれを菩提の種として出家した(『沙石集』)。この説話は世間話または伝説として東北地方から北九州にかけて広く伝承されている。


日本文学大辞典   昭和25年2月15日 新潮社

日本伝奇伝説大辞典 昭和61年10月10日 乾 克己 小池正胤 志村有弘 高橋貢 鳥越文蔵 角川書店


鴛鴦は雁鴨科の水鳥で、冬の雄の翼には橙色の銀杏の羽に似た思羽があって殊に美しく、水上ではよく番いでいるため夫婦仲のよいことの譬えにされる。

歌舞伎登場人物事典 河竹登志夫 2006.5.10 白水社