孟嘗君

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もうしょうくん


画題

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解説

東洋画題綜覧

支那春秋戦国時代の策士、斉の公族で田嬰の子、田氏、名は文、食客数千人、秦の昭王に賢を以て相となる。『鶏鳴狗盗』の故事を以て知らる。

昔漢朝に孟嘗君と云ふ人あり、本は斉の国の人なりけり、狐白の裘と云て、千の狐の脇の皮を取集てしつらひ作りたる秘蔵の物を持ちたりけり、秦昭王に心ならず乞取られて安からず思ひけり、彼の孟嘗君は、様々の能者を三千人従がへ仕ひけり、其の中にりうていと云ふ者は勝れたる犬の学〈まね〉の上手にて而も盗人なりけるを以て、犬のまねして蔵を破り白狐裘を盗み出して逃げけるに、昭王兵を遺はして孟嘗君を討んとす、孟嘗君三千人の客を引率して函谷関にぞ係りける、彼の関は鶏鳴かざるさきには戸を開かぬ習ひなれは、夜深うして通り難し、敵は既に襲ひ来る、遁るべき様もなかりけるに、三千人の客の中に馮踡と云ふ者あり、鶏の音をまねぶ上手なりければ、関の戸近き木に昇りて、鶏の真音をぞ啼きたりける、関路の鶏聞き伝へて一羽も残らず鳴きければ、いまだ夜半の事なれども関守戸をぞ開けてける、孟嘗君希有にして遁れにけり、それよりしてぞ馮踡をば鶏鳴とも申しける。  (源平盛衰記)

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)