女三の宮

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にょさんのみや


画題

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解説

画題辞典

女三の宮とは第三皇女の称なり、源氏物語若菜の巻にある女三の宮特に名高し、朱雀院の御姫宮なり、六条院に御預けあり、御歳十五になり給ふ、或時六条院にて御鞠の興行あり、公卿たち暮をつとめ玉ふに、何とかしけん簾の内より猫の出て来て、その猫の綱にて簾の揚がりたりければ、その折節に柏木の衛門、宮の美しき姿見て遂に恋に悩むには至りしとなり、

宮川長春筆「女三の宮」(東京帝室博物館所蔵)あり。

(『画題辞典』斎藤隆三)

東洋画題綜覧

女三の宮とは第三皇女のことであるが、紫式部が『源氏物語』の若菜の巻に描いた女三の宮か最も有名である、朱雀院の姫宮で、容貌美しく、十五まで六条院に過してゐる、三月のある日兵部卿宮、御門督など集り、大臣も加はつて鞠に興じてゐると、小さい唐猫が現はれてそのの綱から簾が捲かれて女三の官の姿が現はれると、その姿に見洸れて言ひ寄つたのが柏木の衛門である、此の条、筆が精彩を極めてゐる。

御几帳どもしどけなくひきやりつゝ、人げ近く世づきてぞ見ゆるに、唐猫のいと小くをかしげなるを、少し大なる猫の追ひ続きて俄に御簾のつまより走り出づるに人々おびえ騒ぎてそよ/\とみじろぎさまよふけはひども、衣の音なひ耳かしましき心なす、猫はまだよく人にもなつかぬにや、つないと長くつきたるけるを、物にひきかけまつはれにけるを逃げんとひこじろふ程に、御簾のそばいとあらはにひきあげられたるを、とみにひきなほす人もなし、この柱のもとにありつる人々も心あわたゞしげにて、ものおぢしたるけはひどもなり、几帳のきは少し入りたる程に、うちき姿にて立ち給へる人なり、端より西の二の間の東のそばなれば、紛れ所もなくあらはに見入れらる、紅梅にやあらん、濃き薄き、すぎ/\に数多重りたるけぢめ、はなやかに、草紙のつまのやうに見えて桜の織物の細長なるべし御くしのすそまでけざやかに見ゆるは糸をよりかけたるやうになびきて、すそのふさやかにそがれたる、いと美しげにて、七八寸ばかりぞ余り給へる、御衣のすそがちにいと細くさゝやかにて姿つき髪のかゝり給へるそばめ、いひしらずあでにらうたげなり。夕かげなればさやかならず。

女三の宮を画いたもの宮川長春筆(東京帝室博物館蔵)の外、近く帝展第十二回に浅見松江女の作がある。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)