夜もすがら物おもふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり

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「女性の立場で詠んだ歌です。夜の物思いは悲観的になりがちなものです。 そういう時は朝のひかりがかろうじて救いでもあるのに、閨の戸のすき間まで、 つれなくて白んでこないのです。とりわけ下の句に工夫がこらされており、 これが歌の生命とでもいうべき部分といえます。悶々として幾度も寝がえりを うつ女の姿態が暗示され、艶な感じのする歌となっています。『千載集』『百人秀歌』 『百人一首』の古い写本には「明けやらぬ」とあり、江戸初期頃から、上の句をいったん 「で」で切る方が自然とみられたらしく、「明けやらで」とするテキストが多くなったようです。」

百人一首―王朝和歌から中世和歌へ 古典ルネッサンス 井上宗雄 2004.1130 笠間書院


「歌をみれば明らかなように、女の立場にたって詠んだ恋の歌である。訪れない男を待って まんじりともしない夜の長さに、ふだんは気がつきもしない寝室の板戸の隙間にさえ注意は ゆき、えい、いっそあそこだけでも白んでくればいいのに、という気持になる、そこをとらえた 歌で、見どころは戸の隙間に目をつけた観察のこまかさにある。」

ビジュアル版 日本の古典に親しむ② 百人一首 2005.12.10 大観社