千代尼

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ちよに


画題

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解説

東洋画題綜覧

徳川時代の女流俳人、加賀松任の人、表具師福増屋六兵衛の女、十八歳で金沢の表具師福田弥八郎に嫁した、幼時から俳諧を嗜んだが僻邑師に乏しく之を喞つてゐたが、会々廬元坊が行脚して松任に来たので、千代女は直ちにその旅舎を訪ねた、廬元坊は寝に就かうとする処であつたが、千代女が来たので試みに時鳥の題を与へて作らしめた、句が出来たが、廬元坊更に顧ず、更に一句作る、また顧みず、元坊は寝てしまつたが千代女は去らず、やがて夜は明けて元坊は目を覚して見ると千代女が居るので、『夜は明けたか』と問ふ、千代女『ほとゝぎす、時鳥とて明にけり』と吟ず、元坊感嘆して師弟の約を結び之より句作大に上達した、二十五歳の時夫に死別し、後は一子をして家を継がしめ、剃髪して素園と号し安永四年七十四を以て歿した。

あさがほに釣瓶とられて貰ひ水

起きて見つ寝て見つ蚊帳の広さ哉

など人口に膾炙さる。  (近世畸人伝)

太田聴雨筆  『千代尼』  第二回新文展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)