住吉物語
すみよしものがたり
画題
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解説
画題辞典
住吉物語のことは古く源氏物語、枕草紙にもあることなれば、遠く平安朝にありしことゝ思はるれども、そは散佚して今は伝はらず、今に住吉物語としてあるは、この古き物語の名を襲うて後人の作りしものなるべしとのことなり、それも鎌倉以後には降らざるべし。「さる中納言なる人に三人の姫君ありしに、此の方その異腹なる姉姫を悪くみ、さまざまに之を虐げんとせるを、その姫の乳母なるもの住吉に住めるが、之を偸み出て、かねて相恋の間なる其の四位の少将と相会はしめ幸福を得しむる」ことを一編の趣向として綴りしものなり、之を絵巻として画きたるもの、
酒井伯爵家に作者不詳の一巻あり、東京帝室博物館、吉田丹左衛門氏、岩崎男爵、福岡子爵及岸光景氏に分れて所有さるゝものに土佐長隆の筆あり。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
平安朝時代の物語で、その名は『源氏物語』『枕草子』等にも見えるが、原本は伝はらず、現存のものは後人の偽作かといはれ二巻あつて鎌倉時代と称せられる、梗概は中納言兼左衛門督の女、大君は母に別れ継母に虐げられてゐたが、四位少将その才色兼備を聞いて文を通はせ、継母は少将を欺いて己が娘に婿として迎へる、大君は母の乳母の住吉の家に逃れてゐたが、少将それを知つて探し出し京ヘ迎へとり、栄華の身となり、継母は姦計露はれて流浪の身に終る。
これを画いたものに左の諸点がある。
無款 『住吉物語絵巻』(重美) 岩崎男爵家蔵
土佐長隆筆 同残欠 大村伯爵家旧蔵
無款 住吉物語絵巻 酒井伯爵家蔵
同 帝室博物館蔵
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)