今昔物語集

提供: ArtWiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

総合

 古代の説話集。著者は源隆国説があるが、異説もあり、定説はない。三十一巻、ただし現在は巻八・十八・二十一が欠けていて、二十八巻である。十二世紀前半の成立と推測されるが、これは説話・人物の最下限によるものである。目録によると、千七十九話であるが、三十九話が欠けていて、実質千四十話である。仏教説話六百六十三話、世俗説話三百七十七である。書名は各話の書き出しが「今(は)昔」とあるにより、『古本説話集』『宇治拾遺物語』に継承されている。表記はいわゆる宣命書で助詞などは小書きである。現在最古の写本である鈴鹿本以下文中に空白、文章の中絶、各話間の空白、目録のみで本文の欠脱のあるのは未完の書であるためと考えられる。共通説話をもつ『宇治拾遺物語』などと比較するとかなり整然とした組織で配列されている。<略>本書の現存写本の祖本は鈴鹿三七蔵本で、鎌倉時代中期の書写とされている。しかし現存するのは巻二・五・七・九・十・十二・十七・二十七・二十九のみである。鈴鹿本より少し時期のおくれる系統不明の写本は大東急記念文庫・関根俊雄・酒井宇吉に分蔵されている巻三十一の同筆の断簡であり、他はすべて江戸時代の写本である。<以下略>


<引用文献>

『国史大辞典』、吉川弘文館、1979年3月-1997年4月




●江戸時代における今昔物語

 江戸時代に入って、十七世紀では林読耕斎(靖)によって編述、版行された『本朝遯史』、林春斎(鵞峰)編述の『読本朝通艦』、深草元政上人編述の『扶桑隠逸伝』、藤井懶斎編述の『本朝孝子伝』などに「今昔物語」の書名が見えるが、わずかにその一部が参考程度に利用されているにすぎない。その点で『今昔物語集』はその存在と内容の一部は知られていたけれども、広く享受、利用される段階にまではいたっていなかったと言ってよい。


<引用文献>

『今昔物語集4 新編日本古典文学全集』、小学館、2002年6月20日