九世戸

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くせのと


画題

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解説

東洋画題綜覧

能の曲名、官人丹後智恩寺なる九世戸の文殊に参詣し、海人の翁に逢つて、天橋立の縁起を聞き、又竜神出現の奇特を見ることを作つたもの、信光の作、前シテは老翁、後シテは竜神、ワキは官人、ツレは天女、場所は丹後天橋立、季節は六月である。一節を引く

「如何に是なる老人に尋ぬべき事の候ふ、「此方の事にて候ふか、何事を御尋ね候ふぞ、「是は都より始めて参詣の者なり、まづ此所を九世の戸と名付け初めたる其謂を委しく語り給ふベし、「我等賎しき漁人なれば、いかでか語り申すべき、さりながら、まづ九世の戸と名付けし事、かたじけなくも天神七代、地神ニ代の御神、此国に天降り、こゝにて天竺五台山の文殊を勧請し給へば、天の七代地の二代を是れ九世の戸と名付けしなり、「されば菩薩の像体も、是れ帝釈の御作とかや、「其後竜宮に入り給ひ、法を弘めて程もなく、又此島に上り給ふ、「即ち獅子の渡りとて、今に絶えせぬ跡とめて、「竜神御灯を捧ぐれば、「天より天人あまくだり、「天の灯、竜神の御灯、此松が枝に光りをならべ、渇仰の時節今宵なり、有り難かりける時節なり、「扨は神代の昔より今に絶えせぬ此松に捧ぐる御灯を目のあたり、拝まん事ぞ有り難き、「中々の事、御覧ぜよ、出でくる月も曇りなき「天の橋立光り添ふ、都の人も浦人も語れば思ふ事なくて、四方の詠めも面白や、松風も音しげく、立ちくる波も白妙の、月澄み上る色かな。

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)