不動明王
ふどうみょうおう
画題
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解説
画題辞典
仏教にて五大尊明王の中央尊なり、大日如来の変化身にして、不動明王、又不動尊或は単に不動と稱す、一切の悪魔外道を降伏するの任にあるを以て、表に忿怒の相を表はす、形相青黒にして眼光大きく開き、日角に両牙あり、右手劒を持し左手に羂索を執る、利劒は食慾瞋恚愚痴の三毒を害する智慧を標示し、羂索は難伏のものを繋縛する三味の表示なり、或ほ変態としては五鈷又は一鈷を持つものあり、両手に定印を作るものあり、一ならす、其の身は黒色なるあり青色なるあり、ス赤色なるあり黄色なるあり、而も常に焰々なる火焔に包まれて石上に坐するを例とす、是れ一切の煩悩を焼く大悲徳の表示なり、脇侍としてに、制吒迦童子矜羯羅童子を二童子として配置せらる、密教の全盛につれ信仰の中心となりしものとて、彫像に画像に平安初期より作られたるもの極めて多し、木像にては下村観山氏所蔵のもの高野山金剛峯寺及親王院安置のものなど弘仁より藤原初期にかけての傑作にして、画像に於ては変態なれども高野山明王院の赤不動、江州三井寺の黄不動の二者は最古にして且つ最優秀の作と数ふべく(各その条下参照)その他到る所に作品の数多くある中に世に著聞さるゝものを挙ぐれば大要左の諸點あり。
高野山明王院所蔵不動明王一幅(伝智證大帥筆)
京都青蓮院所蔵不動明王二童子像一幅(藤原時代)
京都曼殊院所藤黄不動像一幅
山城醍醐寺所蔵不動明王三幅
山城光臺院所蔵不動明王五幅
山城☆厳寺所脚不動明王一幅
近江園城寺所蔵黄不動一點(伝空光作)
同寺所蔵不動明王八大童子一點
同寺所蔵不動明王一點(伝安然和筒将來)
同寺所蔵不動明王二童子像一點
近江石山寺所蔵不動明王二童子一點
近江大林寺所蔵不動明王二童子一點
近江恵光院所蔵不動明王二童子一點
近江観音寺所蔵黄不動一點
近江成菩提寺所蔵明王二童子一點
高野山五坊寂静院所蔵不動明正三尊子一點(伝願行筆)
播磨太山寺所蔵不動明王童子像一點
同寺所蔵不動明正二童子一點
播磨瑠璃寺所蔵不動明王二童子一點
備前寶光院所蔵不動明王三十童子一點
美作長福寺所蔵明王一幅
讃岐観音寺所蔵不動明王二童子一點
尾張甚日寺所蔵不動尊一點
等何れも国宝に指定されたる名品なり、此他京都金胎寺、實相寺及東京帝室博物館、井上侯爵所蔵等名品として知らる、後世諸家の筆に成るもの亦甚多し、近くに谷文晃渡邊崋山等の水墨を以て描けるものあり、明治初年狩野芳崖が研究態度より新様式を以て試みなるこのは東京美術學校☆にフエノロサ氏旧にあり、明治美術史上の一異彩なり。
(『画題辞典』斎藤隆三)
東洋画題綜覧
不動明王は、密教に祭る五大明王(不動、降三世、軍荼利、大威徳、金剛夜叉)の一、忿怒の相を現はし、外道悪魔を降伏する尊体にして、『大日経』に、『為息一切障故、住火王三味説此大摧障聖者不動主真言』とある、大日如来の化身で、五大明王の中央尊、その形相は青黒、大忿怒の相を大火焔中に現じ、磐石座上に住して右手に利剣を持ち、左手に羂索を執る、蓋し大火焔は一切の煩悩を焼く大悲徳を標し、利剣は貪欲、瞋恚、愚痴の三毒を害する智慧を標し羂索は難伏者を繋縛する三昧を標するためである。 (仏教辞林)
不動明王を図するものは枚挙に遑もないが有名な作のみ二三挙げて置く。
信海阿闍梨筆白描不動 醍醐三宝院蔵
伝智証大師筆 高野明王院蔵
藤原時代不動明王二童子 京都青蓮院蔵
伝安然和尚将来 近江園城寺蔵
伝長隆不動明王 井上侯爵家蔵
伝願行筆明王二王子 高野山五坊寂静院蔵
不動明王八大童子 近江園城寺蔵
不動明王二童子 近江石山寺蔵
不動明王三十童子 備前宝光院蔵
不動明王二童子 近江成菩提寺蔵
その他で、不動明王を中心に脇侍として制吒迦、矜羯羅童子を描くを普通とする。
なほ近代に現代に於ける不動明王の作主な作左の通りである。
川端竜子筆波切不動 第七回青竜社出品
安田靫彦筆白描不動明王
下村観山筆 第六回淡交会出品
木村武山筆 第十三回院展出品
(『東洋画題綜覧』金井紫雲)