お夏

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おなつ


画題

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解説

東洋画題綜覧

近松巣林子作、『五十年忌歌念仏』の女主人公、西鶴では『五人女』の一人、清十郎と恋に落ち、浮名を謳はるゝ中、清十郎は主家の金七百両を盗み出した疑をかけられ捕はれて牢死、お夏はそれを悲しんで狂乱の身となる、坪内逍遥にも、一幕物の舞踊劇『お夏狂乱』あつて世に行はる。

何事もしらぬが仏、おなつ、清十郎がはかなくなりしとは知らず、とやかく物おもふ折ふし里の童子の袖引連て清十郎こさらば、お夏も殺せとうたひける、聞ば心に懸ておなつそだてし姥に尋ねければ、返事しかねて涙をこぼす、さてはと狂乱になりて、生ておもひをさしやうよりもと、子供の中にまじはり、音頭とつてうたひける、皆々是をかなしく、さま/゙\とめてもやみがたく間もなく涙あめふりて、むかひ通るは清十郎ではないか、笠がよう似たすげ笠が、やはんはゝの、けら/\笑ひ、うるはしき姿いつとなく取乱して狂出ける、有時は山里に行暮て草の枕に夢をむすめば、其のまゝにつき/゙\の女もおのづから友みだれて後は皆々乱人となりにけり、清十郎年ごろ語りし人とも、せめては其跡残しおけとて、草芥を染めし血をすゝぎ、尸を埋みてしるしに松柏をうへて、清十郎塚といひふれし世の哀は是ぞかし、おなつ、夜毎に此所へ来りて弔ひける。  (五人女)

お夏を画いた作

勝川春好筆  『お夏狂乱』   (重美)  斎藤報恩会蔵

勝川春常筆  『お夏』     (重美)  同上

島崎柳塢筆  『西鶴のおなつ』       第一回文展出品

勝田哲筆   『お夏』           第七回帝展出品

(『東洋画題綜覧』金井紫雲)